認知症失踪者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/08 14:45 UTC 版)
警察庁の統計によれば、認知症で行方不明の届出がなされた件数は前述のとおり、2020年で1万7,565人であり、統計を取り始めた2012年以降増加しており、2012年の9,607人と比べて約1.83倍に増えた。 2020年中に行方不明になり警察に届け出があった人のうち、所在確認できなかったのは214人だった。交通機関を利用して遠方に行ったまま戻れなくなるケースもあり、早期の発見が求められている。2020年中に2019年以前の届け出分(9件)を合わせて1万6,887人が所在確認された。 都道府県別では大阪が最多の1,990人であった。 死亡が確認されたのは527人であり、主な死因は交通事故のほか、低体温症などによる衰弱死や、河川に転落した溺死などであった。特に、体力や判断力が低下した高齢者の場合、遠方まで徘徊(はいかい)し発見が遅れた場合は命に関わる。届け出の取り下げなどが118人だった。所在確認までの期間は、届け出の受理から1週間以内が約99.3%で、受理当日が約74.2%を占めた。届け出があった行方不明の認知症の人の年代は、80歳以上9,619人、70代6,866人、60代944人などで、70代以上が9割を占めた。 警察庁は各地の警察に対し、届け出人の意思に基づきホームページやSNS(交流サイト)で行方不明者の情報公開をしたり、地域の自治体や高齢者施設、タクシー事業者などでつくる「はいかい高齢者SOSネットワーク」と情報を共有したりする対策を呼びかけている。取り組みには地域差がある。大阪府警は2014年から、自治体や高齢者施設などが保護した身元不明者の顔写真や特徴などの情報を掲載した「身元不明迷い人台帳」を府警本部と警察署に設置。群馬県警は顔写真や手のひらの静脈の形状といった本人確認用の情報を事前に登録する活動を進めている。ただ、こうした情報は個人情報に当たるため、警察庁の担当者は「外部の団体と共有する情報とその仕組みについては、自治体ごとに判断が分かれている」と話す。 また、行方不明になる恐れがある人に自治体が衛星利用測位システム(GPS)端末を貸与し、警察の捜索に位置情報を活用する協定を結ぶ地域がある。更に、神奈川県横須賀市では、全国初のLINEによる認知症の行方不明者情報を発信するシステムを2020年9月から運用を開始する。それに続き、2021年10月1日から鹿児島市で「おかえりサポート」の名で運用が開始されている。 一方、年代別では20代が1万4,516人と最も多く、次いで10代が1万2,860人だった。原因や動機では、20代は仕事がうまくいかないなど「職業関係」の割合が高く、10代は親が厳し過ぎるといった「家庭関係」が目立った。
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