設立と初期の活動(1915年 - 1980年代)
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「アメリカ心臓協会」の記事における「設立と初期の活動(1915年 - 1980年代)」の解説
アメリカ心臓協会は、小規模で一揃いの前身団体から生じた。最初の団体は1915年にニューヨーク市で設立された協会であった。この団体は心臓病の予防と救援を目的に設立され、心臓病を患っている患者が無事に職場復帰できるかどうかについて研究していた。1920年代には、ボストン、フィラデルフィア、シカゴでも類似の組織が設立され、発展していった。研究結果を共有し、世に普及させるための全国的な組織団体の必要性が認識され、1924年にこれらの先駆団体を代表する6人の心臓病専門医により、アメリカ心臓協会が設立された。 1940年代までのアメリカ心臓協会は組織としては小規模であったが、プロクター・アンド・ギャンブル社(Procter & Gamble)が、広告会社を通す形で志願した慈善団体の中から支援対象としてこの協会を選んだ。プロクター・アンド・ギャンブル社は、ラジオ番組「Truth or Consequences」から150万ドルを工面し、アメリカ心臓協会の全国展開を可能にした。 プロクター・アンド・ギャンブル社は、綿花を生産する際に出る廃棄物としての綿実を、動物性脂肪(飽和脂肪酸)に代わる「心臓に良い脂肪」として売り出した。また、プロクター・アンド・ギャンブル社は、「Crisco」(Crystallized Cottonseed Oil, 「結晶化綿実油」)と呼ばれる、人の手で加工されたトランス脂肪酸(Trans Fat)の一種であるマーガリンを発明した会社でもあり、アメリカ心臓協会はこのマーガリンを「バターよりも健康的である」と褒めて宣伝した。部分的に水素添加された植物油から作られる人工的なトランス脂肪酸は人間の健康に害を及ぼすが、天然のトランス脂肪酸である「共役リノール酸」(Conjugated Linoleic Acid)は牧草を食べた牛の身体から取れるもので、サプリメントの一種としても販売されるようになった。 飽和脂肪酸(Saturated Fat)とコレステロール(Cholesterol)の摂取制限に関する推奨事項は1950年代に行われた疫学研究からできたもので、飽和脂肪酸の摂取量については1日の摂取カロリーの10%未満に抑えるべきである、と勧告した。アメリカ心臓協会が1957年に公開した報告書には次の内容が含まれている。 アテローム性動脈硬化症の発症においては、食事が重要な要因となるかもしれない 食事に含まれる脂肪の量とカロリーこそが、おそらくは重要因子である 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の摂取比率こそが基本的な決定要因であるかもしれない 脂肪分以外でも、食事療法とそれ以外の要素におけるさまざまな因子が重要となるかもしれない 1961年にアメリカ心臓協会が発表した報告書においては、これらの事項はさらに強化され、彼らが定めた基本的な推奨事項となった。 適正体重を維持する 体重減少に向けて「適度な運動」に励む 飽和脂肪とコレステロールの摂取量を減らし、多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やす 動脈硬化が起こりやすい家族歴を持つ男性の場合、食事の改善にとくに注意を払うべきである 食事療法を変える際には、医師による監督下で行うべきである アメリカ心臓協会は「飽和脂肪酸の摂取を減らし、不飽和脂肪酸に置き換えれば心血管疾患を防げる」と主張しているが、多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やして飽和脂肪酸の摂取量を減らしても、心血管疾患の発症の危険は減らせないことが分かっている。
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