視床下部の神経内分泌系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/16 15:56 UTC 版)
「神経内分泌学」の記事における「視床下部の神経内分泌系」の解説
下垂体後葉(神経性下垂体)の2種類のホルモンであるオキシトシンとバソプレッシン(抗利尿ホルモン)は巨細胞性神経分泌細胞の神経終末から体循環中に直接分泌される。オキシトシン及びバソプレッシンのニューロンの神経細胞体は視索上核及び室傍核の中にあり、それらのニューロンの電気的活性は脳の他の領域からの求心性のシナプス入力により調節されている。 一方、下垂体前葉(腺性下垂体)のホルモンは、哺乳類においては、神経の直接支配を受けない内分泌細胞から分泌されるが、それらのホルモン(副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) 、黄体形成ホルモン (LH) 、卵胞刺激ホルモン (FSH) 、甲状腺刺激ホルモン (TSH) 、プロラクチン及び成長ホルモン (GH) )の分泌は依然として脳の支配を受けている。脳は、視床下部神経により大脳基底部、正中隆起の血管内に放出される血行性物質である『放出因子』及び『放出抑制因子』によって下垂体前葉を支配している。 視床下部下垂体門脈は視床下部から放出される因子を腺性下垂体に向けて運び、そこでそれらの因子はホルモン産生細胞の表面の特異的受容体に結合する。 たとえば、成長ホルモンの分泌は2つの神経内分泌系により調節されている。すなわち、成長ホルモン放出ホルモン (GHRH) ニューロンとソマトスタチンニューロンであり、それぞれGHの分泌を刺激または抑制する。GHRHニューロンは視床下部の弓状核に位置しており、一方、成長ホルモンの調節に関わるソマトスタチン細胞は室傍核にある。それらの2つの神経系はそれらのペプチドを下垂体前葉に運ぶために門脈血管中に放出する正中隆起に軸索を投射している。成長ホルモンは脈流中に分泌され、その放出はGHRH及びソマトスタチンの放出の交互の発現により起こり、GHRHとソマトスタチン細胞の間の神経的相互作用を反映し、そして成長ホルモン自身の負のフィードバックを受ける。 ではなぜこれらの系は、生理学者や神経科学者の興味を惹くのか? まず第一に、神経内分泌系は我々のほとんどの部分にとって重要なことを調節している。神経内分泌系は、結合から性行動、精子形成、卵巣周期、出産、乳汁分泌、そして母性行動に至るまで、生殖のあらゆる面から支配している。 神経内分泌系は我々がストレス及び感染に対処する手段を支配する。また、我々の摂食行動や取り込んだエネルギーをいかに利用するかということ、すなわち、どのように我々が脂質を取り込むかということを左右する代謝作用を調節する。そして我々の状況に影響を与える。神経内分泌系は体液や電解質の恒常性、そして血圧を調節する。言い換えれば、神経内分泌系は主要な健康に関するいくつもの中心的関心事であり、しばしば奥深い個人的な興味である。 第二に、神経内分泌系は分泌物を産生する小さな工場であるが、ニューロンおよびそれらの神経終末は大きく、終端領域に密着してまとまっている。そしてそれらの出力は血液中でしばしば簡単に測定され、それらのニューロンが何をしていてどんな刺激物にそれらの系が反応しているかが、仮説と実験にすぐに公開される。それら及びその他の理由で、神経内分泌ニューロンは「どのようにニューロンはその産物を合成し、凝縮し、放出するのか」あるいは「情報はどのように電気的活性にコードされるのか」というような普遍的な疑問について研究するためのとても良いモデル系である。
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