自然界の階層性と数理モデル構築の可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 00:48 UTC 版)
「数理モデル」の記事における「自然界の階層性と数理モデル構築の可能性」の解説
一般に物理学では、ミクロな世界の第一原理法則にしたがって相互作用する粒子がシステムの時間発展を決めていると考えられている。ところが、その仮定から考えれば明らかではないことに、自然界には物理的なスケールの違う階層からなる階層構造があり、それぞれの階層においてなんらかの秩序が見られることが知られている(素粒子、原子、分子、高分子、固体、流体、細胞、組織、器官、群れ、社会、習慣、流行、伝染、生態系、地形、天候、惑星系、銀河、銀河団、宇宙、など)。そもそも、われわれ人間のような、外界に対する認識や解釈を行う知的能力を持った生物がいるということが世界がある程度の法則性を持つことの証拠である。そこで、一般に特定の階層に注目し、そこになりたつ普遍的な法則を推定しようという試みがなされる。数理モデルを構築するには必然的にシステムを目的のスケールにおいてよく記述するマクロな変数の導入が必要となる。 数理モデルに導入されるそういった変数の数は少なければ少ないほどより単純でシンプルな現象への理解へと導くという観点から、大成功していると思われるのは、熱力学、流体を記述するナビエ-ストークス方程式、物性論における平均場近似などがある。 また、一つ下の階層における法則が知られている場合には、それを構成要素として組み立てたモデルがよく作られ、さらにその下位の階層における構造は捨象する(例えば、気体分子運動論、電気回路、ニューラルネットワークなど)。しかし、生体や社会のように対象が複雑で、階層間の法則の分離の様子が自明でない場合や、スケールが一つ下の要素を考えるだけで要素数の多さやその多様性などにより変数が爆発的に多くなってしまうものとなれば、適切な変数の設定やモデル化ができるかどうかはもとより、人間に理解できる程度に単純で普遍的な現象論の存在を仮定することは議論がわかれるところである。
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