自然界での探索
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 14:25 UTC 版)
1976年、アメリカの複数の大学の研究者グループが、鉱物による原因不明の放射線障害(特に放射性ハロー(英語版))の原因として、原生的な超重元素、主にリバモリウム、ウンビクアジウム、ウンビヘキシウム、ウンビセプチウムがあると提唱した。 これを受けて、1976年から1983年にかけて、多くの研究者が自然界での探索を行った。1976年、カリフォルニア大学デービス校のTom Cahill教授のグループは、観察された障害を引き起こすのに該当するエネルギーのアルファ粒子とX線を検出したと主張し、これらの元素の存在を裏付けた。特に、長寿命(109年オーダー)のウンビクアジウムとウンビヘキシウムの原子核および、その崩壊生成物の存在が推測され、その存在量は同族体のウランやプルトニウムと比較して10−11であるとされた。 他の人々は、何も検出されなかったと主張し、原初の超重原子核の提案された特徴に疑問を呈した。特に彼らは、そのような超重核はN = 184またはN = 228で閉じた中性子殻を持っていなければならず、安定性を高めるために必要なこの条件は、リバモリウムの中性子不足の同位体または、(ほとんどの天然に存在する同位体とは異なり)ベータ安定性を持たない他の元素の中性子過剰同位体にしか存在しないことを挙げていた。 また超重元素は、天然のセリウムの核変換によって引き起こされたとも提案されており、超重元素の観測と主張していたものの、さらに曖昧さを増していた。 2008年4月24日、ヘブライ大学のアムノン・マリノフ(英語版)を中心とするグループが、自然界に存在するトリウムの鉱床から、トリウムに対して10−11から10−12の割合でウンビビウム292の単原子を発見したと主張した。マリノフらの主張は、一部の科学者から批判された。マリノフは、ネイチャー誌とネイチャー フィジクス誌に論文を投稿したが、査読に回さずに両誌から断られたと主張していた。ウンビビウム292原子は超変形または過変形された核異性体であり、半減期は少なくとも1億年であると主張していた。 2008年のフィジカル・レビューC誌に、質量分析法でより軽いトリウムの同位体を識別すると称して使われていた、この技術に対する批判が掲載された。掲載されたコメントの後に、Marinovグループによる反論がフィジカル・レビューC誌に掲載された。 加速器質量分析(AMS)の優れた方法を使用したトリウムの繰り返し実験では、感度が100倍優れているにもかかわらず、結果を確認できなかった。この結果は、マリノフグループが主張するトリウム、レントゲニウム、ウンビビウムの長寿命同位体に関する結果に大きな疑問を投げかけるものであった。ウンビビウムの痕跡が一部のトリウム試料にのみ存在する可能性はあるが、見込みは薄い。 現在の地球上に原生超重元素がどの程度存在しうるかは不確かである。それらがずっと前に放射線損傷を引き起こしたことが確認されたとしても、それらは今では単なる痕跡に崩壊したか、あるいは完全になくなったかもしれない。そのような超重元素の原子核が自然に生成されるかどうかも不確かである。というのも、自発核分裂によって、質量数270から290の間で重元素生成の原因となるr過程を終了させると予想されており、ウンビニリウムよりも重い元素が生成されるずっと前に終了するからである。 最近の仮説では、プシビルスキ星のスペクトルを用いて、フレロビウム、ウンビニリウム、ウンビヘキシウムの天然での存在を説明しようとしている。
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