自然界での形質転換におけるRecAの役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:48 UTC 版)
「RecA」の記事における「自然界での形質転換におけるRecAの役割」の解説
RecAのシステムにおける分子の性質の分析から、コックス(Cox)はそのデータが”RecAタンパク質の最も重要な役割はDNA修復にある”と結論づけた。RecAについてのさらなる分析から、コックスはそのデータが”RecAタンパク質がDNA修復システムにおける中心的な要素として遺伝子多様性の副産物として進化してきた"とした。 天然型バクテリアの形質転換には、あるバクテリア(多くは同種)間のDNA伝播と、RecAタンパク質が仲介するドナーのDNAとレシピエントの染色体を相同組換えが関わっている。RecAが中心的な役割を果たす形質転換がこのプロセスを実行するために特徴的に相互作用する多くの遺伝子生成物(例:枯草菌の場合は約40種)に依存することは、DNA伝播に適応するように進化していることを示している。枯草菌の場合は伝播したDNAの長さは1/3にもなり、染色体の長さに匹敵するほどにもなりうる。バクテリアの染色体の外部のDNAを組み込む場合、まず最初に菌をDNAを取り込める状態にしなければならない。形質転換は原核生物ではよく起こることであり、これまでに67種の生物が形質転換を起こしうることが知られている。 形質転換で最も研究されている生物の一つが枯草菌である。このバクテリアでは、RecAタンパク質が新たに入る一本鎖DNA(ssDNA)と相互作用し、繊維構造を作る。これらのRecA/ssDNA繊維はコンピテント機構を持ち、細胞質基質まで広がる細胞極から生成する。RecA/ssDNA繊維は、染色体に存在し、相同的領域を読みとるヌクレオフィラメントであると考えられている。このプロセスによって新しく入ったDNAが枯草菌の染色体内でなじみ、遺伝子情報の書き換えが発生する。 ミショッド(Michod)らは、RecAが仲介する形質転換が枯草菌と同様に淋菌、インフルエンザ菌、肺炎レンサ球菌、ミュータンス菌などでもDNA修復のための相同組換えへの適応であるということの根拠を示した。ヒトにとっての病原菌の場合、これらは宿主による酸化的防御から身を守らなければならないため、RecAが仲介するDNAダメージの修復が細菌に大きな利益をもたらしていると考えられている。
※この「自然界での形質転換におけるRecAの役割」の解説は、「RecA」の解説の一部です。
「自然界での形質転換におけるRecAの役割」を含む「RecA」の記事については、「RecA」の概要を参照ください。
- 自然界での形質転換におけるRecAの役割のページへのリンク