背景と法的リスク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 05:57 UTC 版)
パチンコ台に打ち込まれた釘等の状態を各パチンコ店が独自に調整することは、厳密に言えば違法である。 元々パチンコ台は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風適法」と略す)に定めのあるところにより、出玉率等が一定の基準内に収まっているものしかパチンコ店に設置することができない。実際には各都道府県の公安委員会で遊技機規則に基づいて保安通信協会等の「指定試験機関」による型式検定に合格を経て、公安委員会から認可を受けたもの、ということになるが、パチンコ店が独自に釘調整を行うということは、厳密に言えばこの型式検定時の釘の状態を変更することに他ならない。またその変更を行うことにより、明らかに台の性能に影響が出ることは避けられないことから、建前上は風適法第9条違反(公安委員会の承認を受けずに設備の変更を行う)として処罰の対象となる。 しかし、実際にはパチンコ店において釘調整が行われている。これは建前上「客が遊戯しておびただしい数のパチンコ玉が当たることで、釘が元の状態から変化してしまうが、風適法第12条に規定された設備技術基準適合維持規定があり、店のパチンコ台は公安委員会の遊技機規則をクリアした技術基準に適合するように維持しなくてはいけないため、店ではあくまで元の状態を維持するメンテナンスの範囲で行われている」ということになっている。釘調整はパチンコ店の経営戦略の要である出玉を管理する利益コントロールとも関連しているため、店では釘調整は日常的に行われている。釘調整は遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則の「遊技くぎは、遊技板におおむね垂直に打ち込まれているものであること」という言葉の“おおむね”といった曖昧な表現が使われることによって、可能になっていると考えられている。 メーカー関係者がホールで釘調整を行う事は普通ない。釘調整は承認変更の出玉に関わる部分に当たるので事前申請に当たる。これに類する行為は風適法違反となるため。 この名目に従えば、一度実際の営業にパチンコ台が使われ始めた後は(メンテナンス目的以外での)釘調整を行うことは一切許されないことになる。ただ実際には営業開始後もパチンコ店の担当者(多くは店長クラスの人間)により営業時間外に釘調整が行われることが多い。よって営業時間中に当該パチンコ台に対し釘調整が行われているかどうかを確認することは現実問題として困難であった。そのため警察も、あからさまに釘を曲げるなどの行為が行われていない限り、各パチンコ店による釘調整を黙認せざるを得ない状態となっていた(逆に言えばあからさまに釘を曲げた場合は摘発対象となり、実際に摘発例もある)。 上記のように、あくまで釘調整は「本来違法だが黙認されている」ものに過ぎなかったため、当時でも釘調整を大っぴらに公表すると警察の指導・処罰の対象となる場合があった。事実、NHKスペシャル『新・電子立国』でパチンコをテーマに取り上げた際には、番組内でパチンコ店のグランドオープン初日の営業終了後に店長が各メーカーの担当者を集め釘調整を要求するシーンを放映したことから、ディレクターの相田洋が後に著書で明らかにしたところによれば、後日当該パチンコ店に警察の指導が入ったという。 ところが2015年に入り、警察庁生活安全局が「一般入賞口及び中央入賞口付近の釘調整が、型式試験時のものと大きく異なっている」ことを問題視するようになった。具体的には「店舗に設置されているパチンコ機を実際に試打し、その結果が型式試験時のベース値と大きく異なっている場合は、当該パチンコ機が不正改造されたものとみなす」という手法で不正な釘調整かどうかを判断するという基準を提示しており、これに基づき遊技産業健全化推進機構が同年6月より実際に実態調査を行っている。なお同機構では、調査開始から半年間については「自浄作用を促すため、不正な事例が見つかっても警察への通報は原則行わない」方針を明らかにしているが、福井県など一部の都道府県では機構の調査とは別に警察による立ち入り調査が行われている。また釘調整を巡っては、店舗だけでなくメーカー側にも処分が課せられる可能性があることを警察庁側では明らかにしている。
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