胃から分泌される胃酸と、胃酸から胃壁を守る粘液の分泌のバランスが崩れ、胃酸によって胃壁が傷つき、痛みを感じたり出血を起こす病気のことです。胃潰瘍と十二指腸潰瘍を総称して消化性潰瘍とも呼びます。胃の粘膜に対する攻撃因子と防御因子のバランスが崩れる原因はいくつか考えられます。喫煙は胃酸の分泌を多くするため粘膜に対する攻撃因子となり、同時にニコチンが粘膜の血流を妨げるため防御因子を低下させるという二重の意味で悪影響を及ぼします。喫煙者ではヘリコバクター・ピロリ(後述)の感染率が高くなるというデータもあります。禁煙は胃潰瘍の治りをよくするだけでなく、再発率を低くすることもわかっています。また、近年ではヘリコバクター・ピロリという細菌の感染が胃潰瘍の発症に大きく関わっていることが明らかになりました。また、非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)は胃の粘膜を保護するプロスタグランジンという物質を作る力を低下させます。このほか、ストレスやお酒の飲み過ぎも胃潰瘍との関連が深いと考えられています。
い‐かいよう〔ヰクワイヤウ〕【胃潰瘍】
胃潰瘍(消化性潰瘍)
潰瘍とは,粘膜から粘膜下層,さらにそれよりも深部までの組織が障害されなくなった状態をいいます(図).胃にできると胃潰瘍,十二指腸にできると十二指腸潰瘍といいます.成人に発生する潰瘍は,長く胃酸による障害と考えられていましたが,最近ではピロリ菌(Helicobacter pylori)の感染によって正常の胃あるいは十二指腸の粘膜が障害を受けると考えられています.しかし,小児では年齢によって原因が異なり,新生児は生まれるときのストレスや低酸素など種々の障害が原因になるとされ,乳幼児では,ステロイドなどの薬剤や種々の原因によるストレスにより発生し,学童期は心因性のストレスで十二指腸潰瘍の発生が多いとされています. 症状としては,新生児,乳児期から幼児期では,下血や吐血が多く,幼児期では繰り返す嘔吐や腹痛が主な症状となります.学童期以降になりますと,上腹部の限局した部分に痛みを訴えるようになります. 診断はまず,バリウムを飲んでX線撮影を行う,上部消化管造影検査を行い,胃および十二指腸の粘膜に異常がないかをチェックします.最近,大人ではこの検査を行わずに胃カメラで粘膜の状態を直接観察することが増えていますが,小児では全身麻酔が必要なこともありますので,まず最初に造影検査を行い,それでも潰瘍が見つからず,症状が続く場合に胃カメラをするといった手順がより好ましいでしょう. |
治療は,胃酸の酸度を抑える薬剤による治療が主であり,胃や十二指腸の粘膜が再生してくるのを待ちます.また,血液検査や内視鏡検査でピロリ菌の感染が証明された場合には抗生物質を同時に投与して,いわゆる除菌治療を平行して行います. 重度の場合には潰瘍部位からの大量出血や胃穿孔,十二指腸穿孔をきたし,緊急内視鏡や緊急開腹術が必要になることもあります. |
消化性潰瘍
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