職種の制限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/10 17:20 UTC 版)
日本では偏見が薄れ、少しずつ改善傾向にある。学校の健康診断で色覚検査は2003年に行われなくなったが、これ以降の世代は自身の色覚について知る機会がなく、色覚に制限がある職種の採用試験で発覚するという事態も起きている。 日本眼科医会では、鉄道運転士(後述)、染色業、塗装業、滴定実験を伴う業務、色調整・色校正が伴う業務については異常3色覚であっても就業が困難とし、パイロットや鉄道・航空関係の整備士、商業デザイナー、警察官、看護師、獣医師、カメラマン、食品の鮮度を確認する作業が伴う業務、美容・服飾関係の業務については2色覚での就業が困難としている。また、医師や薬剤師、理容師、電気工事士、教師などについては本人の努力が必要としている。このため、日本眼科医会は進路選択前に色覚検査を受診することを推奨している。 絵画など色を使う芸術分野への就業は不可能ではないが色の判別ができないことは足かせとなるため、安藤正基のように白黒で済む漫画家を目指す者もいる(実際には色塗り作業は多い)。また石ノ森章太郎は『マンガ家入門』において色が判別できなければ(アシスタントなどの)他人に塗ってもらえばいいとしている。 運転免許については信号機の色が弁別しづらいために取得できないという誤解があるが、普通自動車免許については赤、黄、青の3色を弁別できれば取得できる。運転免許が取得できるにもかかわらず、バスの運転手では採用をしないケースもあったが、色覚補正レンズの使用を認める例もある。 船舶は舷側灯として左舷側には紅灯、右舷側には緑灯の装備が法定(海上衝突予防法21条2項)されており「赤緑色盲」は致命的であるが、海技士はパネルD15テストで正常とみなされれば受験可能である。また水先法施行規則によれば、水先人になるためには色盲または強度の色弱でないことが求められる。2004年からは、小型船舶操縦士は強度異常であっても夜間に舷側灯の色が識別できれば免許を取得できるようになった。 動力車操縦者(鉄道の運転士)免許試験では色覚に異常のある者の受験を認めていない。根拠法は、国土交通省が定める、『動力車操縦者運転免許に関する省令』による。また運転士以外の運転業務に就く際にも色覚が正常である必要がある。なお鉄道会社では、運転業務に就く可能性がない非常勤採用などの場合を除き、採用時に色覚検査を行っており、色覚に異常のある者は鉄道会社への就職はできない場合が多い。 航空機の位置灯は左翼端が赤灯、右翼端が緑灯、上下が赤色の閃光灯であるため、船舶と同じく「赤緑色盲」は致命的であり、操縦士は石原表で正常範囲と認められない場合は不適合となるが、パネルD15テストの検査と眼科の専門医の判断により適合となることもある。航空管制官採用試験では、色覚に異常のある者は不合格となる。航空業界では法的に定めがなくとも航空整備士や地上支援業務を行うグランドハンドリングなど、航空機に接近する職種での採用は厳しくなっている。 自衛隊では航空機関係と潜水艦乗組員には特に厳しい色覚制限があるが、その他の職種についてはパネルD15テストの結果が正常であれば入隊可とされている。これは、防衛医科大学校の医官が実際に自衛官の各業務の内容を実地に精査し、色覚異常の隊員等の勤務成績も勘案した結果出された判断であって、その後10年間の追跡調査でも、色覚異常の有無による勤務成績の差は見られていない。 毒物及び劇物取締法によれば、色盲の者には特定毒物研究者の許可を与えないことができる。 警察官採用試験は自治体により異なっていたが、最後まで残っていた沖縄県が2011年6月に制限を廃した。
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