翻訳の調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 22:41 UTC 版)
細菌の細胞は栄養素が欠乏したとき、静止期(stationary phase)に移行してタンパク質合成を低下させる。この移行はいくつかの過程によって行われる。例えば大腸菌では、70Sリボソームは RMF (ribosome modulation factor) と呼ばれる6.5 kDaのタンパク質を結合して90Sの二量体を形成する。このリボソーム二量体は中間体で、続いて HPF (hibernation promotion factor) と呼ばれる10.8 kDaの分子を結合し、2つのリボソームが30Sサブユニットを介して二量体化した、100Sリボソーム粒子を形成する。このリボソーム二量体は休眠状態にあることを意味し、翻訳不活性である。大腸菌の細胞が静止期に入ったときにリボソームに結合する3つ目のタンパク質は、YfiA(以前はRaiAという名前で知られていた)である。 HPFとYfiAは構造的に類似したタンパク質で、どちらもリボソームのA部位とP部位に結合することができる。 RMFは16S rRNAとmRNAの相互作用を防ぐことで、リボソームがmRNAに結合するのを妨げる 。大腸菌のYfiAがリボソームに結合しているとき、そのC末端のテールはRMFの結合を妨げるため、リボソームの二量体化は防がれ、翻訳不活性な単量体の70Sリボソームが形成される。 リボソームの二量体化に加えて、リボソームのサブユニットの会合が RsfS(以前はRsfまたはYbeBと呼ばれていた)によって妨げられる。RsfSはリボソーム50Sサブユニットのタンパク質L14に結合することで、50Sサブユニットが30Sサブユニットと会合して機能的な70Sリボソームが形成されるを防ぎ、翻訳の活性を低下させる、もしくは完全にブロックしてしまう。RsfSはほとんどすべての真正細菌に見つかり(ただし古細菌には存在しない)、そのホモログは真核生物のミトコンドリアや葉緑体にも存在しており、それぞれ C7orf30、iojap と呼ばれている。しかしながら、RsfSの発現や活性がどのように制御されているかについは未だ分かっていない。 大腸菌がもっている他のリボソーム解離因子は、機能未知のGTPアーゼとして知られていた HflX である。Zhangらは2015年、HflXがヒートショックによって誘導されるリボソーム解離因子であり、空の、もしくはmRNAが結合したリボソームを解離することを示した。HflXのN末端のエフェクタードメインは、peptidyl transferase centerにクラスI終結因子(RF1およびRF2)ときわめて似た様式で結合し、central intersubunit bridgeに劇的なコンフォメーション変化を引き起こすことで、サブユニットの解離を促進している。したがって、HflXの欠失はヒートショックや他のストレスによって立ち往生したリボソームの増加につながることとなる。
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翻訳の調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 15:53 UTC 版)
詳細は「翻訳調節(英語版)」を参照 mRNAの翻訳もまた多数のメカニズムによって制御されているが、そのほとんどは開始の段階で行われる。リボソーム小サブユニットのリクルートは、mRNAの二次構造、アンチセンスRNAの結合、タンパク質の結合などによって制御される。原核生物と真核生物の双方において、多数のRNA結合タンパク質が存在し、それらはしばしば、転写産物の二次構造によって標的配列へ差し向けられる。その二次構造自体も、温度やリガンドの存在(アプタマー)などの条件によって変化する。いくつかの転写産物はリボザイムとして機能し、自身の発現を制御する。
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