翻訳の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/01 01:14 UTC 版)
保篠が翻訳家として活躍し始めた当時は、著作権の概念はまだ一般的でなかったが、その時代にあって、保篠はルブランに翻訳権料を支払い、正式に権利を取得したうえで翻訳を行なっていた。そのように手続きを踏んでいたこともあってか、ルブランから原稿をそのまま入手して翻訳にあたることもあった。 保篠訳は格調高い名調子で知られ、長く「ルパンといえば保篠訳」という時代が続いた。 "Lupin"を「ルパン」とする表記は保篠が考案者であるとも言われる。この点では異説もあるが、保篠が日本人にとっての呼びやすさなどを考慮して、「ルパン」を使用し、その呼び方の定着におおいに貢献したのは確かであろう。 ルパンシリーズの中でも傑作長編として知られる作品『奇巌城』の訳題を考案した(原題は「虚ろの針」といった意味)のは保篠であり、この表題は現在の翻訳者たちも採用する名タイトルとなっている。他に保篠による名タイトルとしては、登場人物の特徴から発想したという「呪の狼」(現在「虎の牙」下巻として知られる原書につけた訳題)が挙げられる。 その翻訳は原文を注意深く参照したうえで綴られた保篠流の名調子であり(必ずしも原文に忠実ではないとの指摘がある[誰によって?])、また物語を改変した箇所も確認されていて、厳密な全訳とはいえないが、その事実を含めて考えても、彼の訳業は戦前・戦後日本の「ルパン受容史」の中で欠かせない重要な仕事であったといえる。 「保篠ルパン」は現在入手が困難になっており、復刊を望む声も聞かれる[誰によって?]。
※この「翻訳の特徴」の解説は、「保篠龍緒」の解説の一部です。
「翻訳の特徴」を含む「保篠龍緒」の記事については、「保篠龍緒」の概要を参照ください。
- 翻訳の特徴のページへのリンク