緩流河川型霞堤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 15:50 UTC 版)
豊川のような緩流河川では、増水時に不連続部となるに本堤開口部より二番堤堤外へ逆流氾濫させて貯水する。貯水されることにより下流への流水量が抑えられ洪水調節機能が働く。不連続部周辺の堤内(生活・営農区域)側は、予め浸水を予想されている遊水地で、それにより洪水時の増水による堤への一方的負荷を軽減し、決壊の危険性を少なくさせた。これは遊水時には、堤外地(河道内)と堤内地(霞堤遊水地)の水位差が減り、堤防の浸透破壊の原因となるパイピング現象を防ぐ。他にも、本堤と二番堤の間に湛水して形成したプールが、本堤越水時に流れ落ちる水のエネルギーを拡散・減勢するウオータークッション効果がある。これによって堤防法尻の洗掘を防ぐなど、堤防決壊のリスクを低減させる。 この逆流氾濫させる遊水システムの優れた点として、洪水で運ばれる土砂は、もともと上流の山林で形成された肥沃な土壌であり、それをそのまま下流に流すことなく、営農区域に蓄積する機能を有したことがあげられる。氾濫流は開口部からゆっくり逆流するため、輪中堤の設置や宅地の嵩上げのような浸水対策をある程度とっておけば、床下浸水が頻繁に起こっても、家屋の損壊には甚大な被害には及ばない。近代化された視点からは、治水を単なる土木工事の対象としか見ないことが多いが、農業さらに広くはエコロジーの視点を持った治水法として再評価されている。
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緩流河川型霞堤
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緩流河川型霞堤において豊川や雲出川では不連続堤を有する区間の勾配は1/1000前後が多く、逆に1/450より急な箇所には存在しない。緩流河川型霞堤においては2番堤の角度が40度より広い角度となっているものが多く、急流河川と大きな違いを見せている。不連続堤の遊水機能について考えると開口部に対する2番堤の角度が広い場合、洪水が開口部から流入する際に流入経路を阻害せず、より多く貯水できる。一方2番堤の角度が狭い場合、洪水の流入を阻害し、角度の大きい場合に比べ貯水容量が減少するだけでなく、流入してくる水が堤防に垂直に当たるため、堤防への負荷がより大きくなる。豊川の鎧堤などの緩流部に設置されている不連続堤は、洪水を開口部から限定された氾濫原へ貯留し、下流を守る遊水機能を主目的としているために、2番堤の設置角度が緩く、不連続堤内の面積も広いということができる。鎧堤の開口部付近では堤防が河道に近づき、狭窄部となり、氾濫原を限定するための堤防は段丘に接続するように設置されているものが多い。また、氾濫原にある集落は、集落周辺を堤防で囲い、輪中堤、囲堤の設置、または住宅地部分を盛土によって嵩上げするなどし、対策をとている。元々、遊水地に浸水させる目的があるので、堤は高くない。氾濫原へ貯留し、川の水位が下がり始めれば、逆にその切れ目から速やかに排水が行われる。治水工法としては、守りたい箇所の上流に狭窄部をつくることによって遊水し、下流の主要市街地を守っていた。豊川には9つの遊水地が設けられており、総湛水量は約1540万m'であり、かなり大きなダムの洪水調節容量に匹敵している。最上流の遊水地の河床勾配は約1/700と比較的急であるため湛水量は総量の約1%を占めるに過ぎず遊水効果の限界性を示している。そのため河床勾配が緩やなところに狭窄部を設けることによって遊水機能が生かされ、狭窄部は緩流河川型霞堤の特徴である。川幅を人為的に狭窄させ、その上流で氾濫遊水させる治水方式は、霞堤という言葉が当てられているわけではないけれど、江戸時代ではごく一般的な治水方式であった。たとえば、江戸時代における利根川治水の眼目と言われる瀬戸井・酒巻狭窄部とその上流での氾濫遊水および乗越堤たる中条堤は、まさに豊川方式に完全に一致し、単にそれを大規模化したものである。また、荒川から隅田川に名称が変わる付近に、右岸から日本堤、左岸から隅田堤をラッパ状に突き出し、その上流で氾濫遊水させていたが、これもこの方式と類似している。この利根川、荒川の治水方式も江戸時代初期に確立されており、名治水家と言われた伊奈一族に指導されたものである。しかし、これらには霞堤という呼び方は当てられていない。
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