米国の大型巡洋艦との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 14:12 UTC 版)
「B65型超甲型巡洋艦」の記事における「米国の大型巡洋艦との関係」の解説
1930年代中盤のアメリカ海軍は、ドイツ海軍のドイッチュラント級装甲艦(通称“ポケット戦艦”)や、シャルンホルスト級戦艦、日本海軍が建造予定とされた新規大型巡洋艦に対抗する必要に迫られていた。これらの通商破壊艦や大型巡洋艦(巡洋戦艦)に対抗してアメリカ海軍が建造した艦が、アラスカ級大型巡洋艦 (Alaska Class Large Cruiser) である。 この両艦を比較すると、同サイズの艦艇同士の戦闘を目的として建造された艦に見えるが、用兵上から要求される建造目的、及び技術的な設計思想では相当異なる。超甲巡は、既述の通り金剛型戦艦の代艦であり、夜戦部隊の旗艦として建造され、敵主力艦に味方水雷戦隊が接近するために敵警戒部隊(特に敵巡洋艦)を排除する役割を担った。「巡洋戦艦」的な性格が強く、自艦主砲への対応防御を施し、防御構造を始めとして、大和型戦艦の技術的影響が随所に確認される。一方で、在来の重巡洋艦とは船体構造や耐弾・水中防御等で直接の影響下にはなく、単純に大型化した巡洋艦と呼ぶのは不適切と言える。 一方、アラスカ級の建造目的は、当時アメリカ海軍が想定した在来の巡洋艦の延長線上と言えるものであり(具体的には、空母部隊の直衛艦任務、及び単艦での分遣・哨戒任務)、そこから想定される戦闘で、「遭遇した条約型巡洋艦や通商破壊艦を一方的に撃破できる能力を有すること」及び「条約型巡洋艦を超えた『巡洋艦キラー』となる大型巡洋艦の出現に対抗出来ること」を目的としていた。設計思想でも、防御の基本計画、特に水中防御構造等は、巡洋艦式設計の延長上にあり、また、対弾防御も、自艦の同級砲よりも、下位の巡洋艦の攻撃への十分な対応防御を期することが設計上の重要な議論であり、文字通り「大型化した」巡洋艦として計画、建造された。 アラスカ級大型巡洋艦は6隻建造される予定だったが、就役したのは2隻(アラスカ、グアム)に終わった。太平洋戦争では、空母機動部隊の護衛や対地艦砲射撃に従事した。超甲巡が建造されなかったこともあり、戦前に想定した活躍の場はなかった。また高速化した戦艦とのプラットホームとしての余裕の違い、建造・運用コストでの優位性の比較、及び実際の艦の操舵性の悪さなどから、失敗としての評価が多くなされている。そのため、日本海軍が超甲巡を実際に建造した場合も、同様の結果になったのではないかという意見がある。しかしながら超甲巡の場合は、上述の通りアラスカ級とは若干の性格の違いがあり、また「現実に実戦で酷使するほど活用された金剛型の代艦として建造される」というアメリカ海軍にはない観点がある。実際の所は単なる計画のみで終わったために、建造・運用実績に基づく評価が出来ず、評価は推測の域を出ない。
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