米国の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/14 00:21 UTC 版)
犯罪捜査にはFBIが様々な学問を導入して捜査を効率化することを目的として始められた。米国の場合、地域ごとの州法があり、各州の独立性が極めて高く法制度が大きく異なるため、情報の共有が円滑に行われない上にFBIも暴力犯罪には参画できない。そうした事情もあり、検挙率が極めて低い状態が続いてきた中で、広域型・組織型・非従来型・快楽殺人型といった犯罪の種類だけでなく、事例・事象・経験・データを元に犯人像を絞りこみ、限られた法執行機関の資源(人・物・金)の中で効率的に活動を進めるべく研究されたのがFBIによる犯罪者プロファイリングである。初期のものは犯罪捜査専門家同士の経験則に基づく討論会のようなものであったが、これら経験則をデータベース化することである種の犯罪には一定の共通項も存在することがわかり、犯罪捜査の一環として用いる価値があると判断された。 1972年FBIに行動科学課が創設され、ジェイムズ・A・ブラッセル医学博士、ハワード・テテン、ロバート・K・レスラー、ジョン・ダグラス等がプロファイリングを担当した。プロファイリング関係の書籍で挙げられている事例は、テッド・バンディ事件やジェフリー・ダーマー事件など25年以上前の事件が多い。現在のような高度なDNA鑑定・指紋データベース・コンピュータが存在しなかった過去においては、検挙率を高めるためにはあらゆる学問を総動員しなければならなかった。プロファイリングは、高度なデータベースや鑑識技術がなかった昔に現実の必要性に迫られて発展したものである。 1982年、米国バージニア州クアンティコのFBIアカデミーに「反復殺人者の素性を割り出して犯人をつきとめる」目的でNCAVC(国立暴力犯罪分析センター)が設立され、全国規模の情報交換センターとしてデータベースと専門家を集約し、全米における凶暴犯逮捕プログラムとプロファイリングの中核施設とした。現在このNCAVCの行動科学部特別捜査官に配属されるためには、最低でも修士の学位と一定以上の捜査経験が求められる。 以上の点から判るようにFBIプロファイリングチームは警察に対する助言者であり、犯罪分析専門担当者であり、犯罪研究者であるが捜査官ではない。後述のデヴィット・カンターはFBIプロファイリングチームを評する際に『犯罪捜査コンサルタント』と言う表現を用いている。
※この「米国の場合」の解説は、「プロファイリング」の解説の一部です。
「米国の場合」を含む「プロファイリング」の記事については、「プロファイリング」の概要を参照ください。
- 米国の場合のページへのリンク