第1章 物語のはじまった崖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/12 05:13 UTC 版)
「海炭市叙景」の記事における「第1章 物語のはじまった崖」の解説
まだ若い廃墟 若い兄妹は、なけなしの金をはたいてロープウェイに乗り年越しを迎えた。帰りの切符代が足りず、兄は妹だけをロープウェイに乗せ、自らは冬の登山道を通って下山するという。妹はロープウェイの山麓駅で兄の帰りをただ待ち続けていた。 青い空の下の海 結婚することになった青年は相手を親に会わせるため海炭市行きのフェリーに乗っていた。海炭市の山が見えた時青年は正月に起こった遭難事故のことを思い浮かべながら妻となる女とこの先の行く末について語らいの時を過ごす。 この海岸に 一度は首都に出た満夫は母が結核にかかり入院したことを機に妻と子を連れ海炭市にUターンしたが、父とのわだかまりをかかえたままでいた。新居に引っ越しの荷物が届かずいらだちを募らせつつ、暖を求めて寂れかけた海岸通り沿いの街並みを歩き酒屋にたどり着き一杯くちにしながら父とのことを今一度思い返す。 裂けた爪 実家の燃料店を継いだ春夫は配達先で足の指を地面とガスボンベの下に挟みケガをする。配達先のアパートの住人に応急処置をしてもらい店に戻り、プールに行く約束を守れなかったことを詫びるためひとり息子のアキラを呼ぼうとするが、アキラの様子がおかしいことに気づき、後妻の勝子が前妻との子であるアキラに虐待を加えていることを確信する。 一滴のあこがれ 塗装会社を倒産させた父の都合で淳は海炭市から80km離れた人口2万の仙法志街から引っ越してきた。父新しい市街地となる工業団地の建設現場で働き母は文句を言いつつも近所の卵問屋にパート勤め。学校をズル休みした淳は記念切手を取り扱う古物商が入る駅前の繁華街のデパートに足を向け、街の営みの中で14の少年なりの想いを膨らませる。 夜の中の夜 駅前のパチンコ屋に勤めている幸郎は店のマネージャーから若い従業員の忍の素行について相談を持ちかけられる。幸郎は息子ほど歳の離れた忍に息子に接するかのようにことを辞めるよう諭す、一通りの話を終えた幸郎は連絡船の桟橋に向かいながら自らの過去と海炭市を離れる時には幸郎という偽名を名乗らなくて済むことを振り返り想いにふける。 週末 もうすぐ定年を迎えようとする路面電車の運転手の達一郎は初孫が生まれようとしているこの日もいつも通り電車を運転する。車窓に見える海炭市の市街地を眺めながらこの街の行く末、妻の猛反対を押し切り結婚した娘とその夫などをのことを想い気持ちをざわめかせる。 裸足 祖母の納骨に立ち会うため首都から帰郷した博は、祖母のルーツをたどりかつて働いていたという古新開町の繁華街に繰り出したが、なぜか場末のポン引きスナックにたどり着く。しかたがなく母ほどの歳の女の相手をしていると浜言葉を使う男がやって来て別の客のスーツ姿の男とケンカを始め、浜言葉の男を止めるかたちで博が仲裁に入りその浜言葉を使う男をタクシーで送って行くこととなる。 ここにある半島 悦子は街の東の山の麓にある墓地公園の管理事務所に勤める。墓地公園周辺は普段は人気がなく、ひたすらウォークマンでスティングのテープを聞きながら淡々と日々の業務をこなす。悦子は静かな山の上から海炭市の街のありようについて、そして自分のこれからについていろいろと考える。
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