空の脅威
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/03 03:21 UTC 版)
戦車、また他の装甲車輌は、いくつかの理由から航空攻撃に脆い。一つには車輌が容易に索敵できるためである。金属はレーダーによく反射し、また編隊を作って行動しているときには特に明瞭となる。また走行中の戦車は大量の熱と騒音を作り出し、塵埃を巻きあげる。熱により、車輌は赤外線前方監視装置(FLIR)で容易に観察できるようになる。また巻きあげた塵埃は、日中の視界で良い手掛りとなる。 他の大きな理由としては、大部分の装甲車輌は砲塔や機関室上面の装甲が薄く、攻撃ヘリコプターや対地攻撃機の撃ち出す対戦車誘導弾がそれら車輌の上面に直撃すれば、小型の弾頭であっても致命的である。小口径の機関砲、機関銃であっても、戦車の機関室上部や、後面の装甲を貫通するには充分強力となる。 ある種の航空機は装甲車輌の攻撃用として開発された。ことに注目できるのは、フェアチャイルド社のリパブリックA-10サンダーボルトIIである。本機は、より空力学的に配慮された軍用機と対照的な形状を持つことから、「ウォートホグ」(イボイノシシ)という愛称で知られる。 本機は数種類の異なるミサイルと爆弾を装備でき、その中には対戦車兵器であるAGM-65 マーベリックが含まれる。本機の主兵装はGAU-8 アベンジャー30mm機関砲である。ガトリング砲形式のこの機関砲は、分当たり3,900発の劣化ウラン製徹甲弾を発射できる。A-10は低速・低高度飛行が可能で、また本機自体が「飛行できる装甲された乗り物」である。パイロットの全周囲はチタニウムで装甲され、フレームは23mm口径の徹甲弾や高性能榴弾の直撃から生残できる。また航行システムには3重の冗長性が確保され、機械的な機構には予備として2重の油圧系統がある。ソビエト連邦における同種の航空機にはSU-25があげられる。 同様に、数種類の攻撃ヘリコプターは、主として敵装甲車両と交戦するよう設計された。例としてはAH-1Z ヴァイパー、AH-64 アパッチ、AH-2 ローイファルク、ユーロコプター ティーガー、Ka-50 ブラックシャーク、Mi-28 ハボック、そしてリンクスがあげられる。ヘリコプターは、多くの理由から装甲車輌に対して非常に効果的である。AH-64Dロングボウ・アパッチを例とすれば、本機は改良されたセンサー群一式と兵装システムを備え、またAN/APG-78ロングボウ火器管制レーダードームをメインローター上に装備する。しかしながら、ヘリコプターは地上からの小火器の銃撃に非常に脆いことが判明し、当初攻撃ヘリに割り振られていた大部分の任務は、替わりとして、より重装甲の施されたA-10が実行している。 航空攻撃の脅威は、いくつかの方法で対処が可能である。一つは制空権であり、アメリカ軍が最も頼りとするものである。これは、アメリカ軍独特の、機甲部隊に随行し、効果的で機動力のある短距離対空車両が欠如していることから示される。他国の大部分は自軍機甲部隊に高い機動力を持つ自走式対空砲を伴わせている。これはドイツのゲパルト自走対空砲や、またはソビエトの9K-22ツングースカのような車輌である。またソ連の2K12、9K33、9K37のような、短距離・中距離地対空ミサイルシステムが備えられるほか、9K22ツングースカを例に取れば、この車輌は9M311地対空ミサイルの発射母体となるなど、両車の機能を一つの車輌に統一するようになった。 戦車の主兵装から発射される対空砲弾の運用能力は、長年にわたって増強されてきた。一例としては、T-90の発砲するHE-FRAG(破片効果榴弾)は、レーザー測距儀によって調定され、予定の距離で起爆する。
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