砂が鳴る仕組み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 23:37 UTC 版)
砂が発する音についての議論は、19世紀末からNatureに多くの投稿が見られる。寺田寅彦は「砂の話」の中でダイラタンシー現象とJ.J.Thomsonの説を紹介している。諸説ある中で最もよく知られているのはBagnoldのすべり面説である。砂の中にすべり面(砂の塊が動きやすくなる面)が生じて、stick-slip現象に伴いすべり面上の粉体層が弾性的に懸垂されているかのように鉛直方向に振動すると考える。その後、日高らによって、強力なX線によるすべり面の連続撮影が行われ、stick-slip現象が詳しく調べられた。また、西山らは、音の振動数が発音条件に大きく依存することを実験で示し、spling modelを提案した。近年は理論研究が進み、流体力学によると、すべり面は一つの平面ではなく、幅約5mm程の無秩序で激しく運動する砂粒子層からなり、この境界層の振動によるとするslip channel説が提案された。さらに、砂漠のBooming音についての大掛かりな実験が行われ、地下2m付近に音速の不連続面が存在していて、砂が滑り落ちるときに上部の砂層が共鳴して大きな音になるとするwaveguide modelも提案されている。今も、フランスやアメリカ、さらにカナダの大学で精力的に研究が進行している。 「かえるすな(Flog Sand)」と呼ばれる科学玩具がある。鳴き砂を適量の水と空気と一緒にアクリル容器に入れて密封したもので、手で持ってゆっくりと左右に振ると、ゲロゲロとカエルが鳴くような音が次第に大きくなる。容器が小さいときは高い音が、容器が大きくなると低い音がでる。管楽器のように、空気柱の共振(共鳴)と、砂層を伝わる音波の共振による定在波が生じて、容器壁を振動させていると思われる。 鳴き砂、鳴り砂の成分は石英粒が主体で、砂全体に対してほぼ62パーセント以上含んでいるものが多い。イタンキ浜の石英含有率は67.7パーセント。九九鳴浜の石英含有率は96.1パーセント。十八鳴浜の石英含有率は85.8パーセント。琴引浜の石英含有率は77.5パーセント。琴ヶ浜の石英含有率は76.3パーセント。鳴るためにはゴミ(浮遊性の植物起源のゴミは含まない)が少ない必要があり、また、自然界の鳴き砂は粒度範囲が限られ(地質学で砂と定義されている粒度範囲)1mm以上の砂、200μm以下の砂の鳴り砂、鳴き砂はないようである。海浜の工事(波消しブロックを設置したり、岬の工事等)などのために海流が変化し砂の成分構成(鉱物成分や粒度分布など)が変わってしまうと鳴らなくなる。また、鳴り砂、鳴き砂の浜の背後やその近辺には石英を多く含む花崗岩が分布する場合が多く、感度の良い鳴き砂の浜は砂の堆積層が海に接したところに多い(島根県琴ヶ浜など)[要出典] 鳴り砂、鳴き砂は、川から流れた細かい砂や海岸線の崖などの砂が水中に攪拌され、それが一定の波の穏やかな場所に漂着、均一化し堆積して長年のうちに表面研摩される。鳴り砂、鳴き砂になるための海浜に最も重要な条件は砂の出入りがないことである。馬路町の琴ヶ浜はその代表な砂の堆積である。今もなお川からの流れ込む砂の海浜では、常に新しい砂が混じってしまうため鳴り砂、鳴き砂になることはほとんどない。その地域の海が汚れることで砂が鳴らなくなってしまうこともあるため、海洋汚染や自然破壊と関連づけて取り上げられることが多い。汚染によって鳴らなくなった砂を再度鳴かせるNHKのドキュメンタリー番組の企画では、長時間にわたる洗浄によって砂の汚れを完全に落とす必要があったという。鳴り砂、鳴き砂が鳴らなくなる原因としては、粒度や構成成分が変わってしまう場合がある。この場合には、長時間洗浄しても回復の望みはない[要出典]。
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