登場と台頭の理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 19:43 UTC 版)
歩兵としての少年兵が多く用いられるようになった理由の一つに、武器の小型・軽量化や大量生産による低コスト化がある。かつて武器の主力であった刀剣や槍、弓矢といった物理攻撃用の武器は寸法が大きくてかさばるうえ、相当の重量もあるため、使いこなすには熟練が必要であった。そして、子供用の軽量の武具では、鎧に身を包んだ敵兵を倒すだけの威力は望めなかった上、容易に敵に蹴散らされる危険が高く、正面兵力としては使い物にならなかった。 15世紀に銃が登場してからも、20世紀後半まで主力であった火縄銃やマスケット銃、ボルトアクション方式小銃にしても、全長が長く重い上に反動も強かったため、子供では大人と同様に使いこなしてすばやく移動することは難しかった。以上のような理由で、戦争当事国がよほど追い詰められている状況でもない限り、少年兵は「動員しても(正面戦力としては)役に立たない存在」とされ、陸戦の主役たる歩兵として前線に立たされることを防いでいた。 ただし、歩兵以外では、古くは帆船時代の軍艦では火薬運搬手などとしてしばしば用いられ、また近代戦でも戦車や航空機など個別の技能を要求される兵器では少年時代からの訓練が効果的であるため、志願による少年訓練生の制度は一般的であった。なお、当時は15歳ほどで「成人」として認められるなど、現在とは「少年」の概念が若干異なる。 しかし、ベトナム戦争後に各国で主流の歩兵装備となったアサルトライフルと個人携行対戦車兵器の出現、銃器の軽量化はその状況を一変させ、2つ合わせても10kgほどの重量しかないAK(カラシニコフ突撃銃)とRPG7は、最低限の訓練とともに子供を十分な攻撃力を持つ歩兵に変えてしまうようになった。 アサルトライフルは市街戦に代表される接近戦を有利に展開させるため全長が短く軽量にデザインされ、大量生産が容易であるため安価に供給され、フルオート連射を容易にするために比較的威力が低く反動も少ない小口径・短小薬莢の弾薬を使用している。このためアサルトライフルは子供でも携行・射撃が容易となり、至近距離からフルオートで弾をばら撒くように連射するだけなら正規軍の兵士のように射撃に習熟させる必要もない。 また、個人携行対戦車兵器は、極めて低コストかつ容易な取り扱いで、個人が物陰から一撃で高価な装甲車両を撃破することを可能とした反面で、発射後の爆風や火球で位置が特定され易く射手の死亡率が高いという欠点を持つため、これが登場した第二次大戦中から使い捨てにできる子供や老人達に装備させるのに適した兵器として量産された経緯を持つ(例:国民突撃隊)。
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