発覚の結末
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 05:56 UTC 版)
欧米の場合、捏造が発覚すれば、多くの場合、研究者としての人生は終わる。というのは、不正研究をしたことで、所属機関から懲戒免職・懲戒解雇され、研究助成機関からの研究助成金は没収または返還が要求される。学術界は狭い世界で、かつ、競争が激しいため、不正研究を犯した研究者は、通常の大学・研究機関で再び採用されることはまれである。そのうえ、数年間は研究助成機関からの研究助成を受けられない。出版社からは、論文の掲載が断られる。 しかし、例外もある。特に研究者の地位が高く優れた業績をあげていた場合、学術界は、当該研究者の業績が傷つかないように結束して防御することがある。 韓国では、元ソウル大学教授の黄禹錫の捏造事件が世界を騒がせた。2004年のサイエンス論文、2005年のネイチャー論文が捏造だとされたことから始まり、研究費不正、韓国の生命倫理法違反まで広がり、2014年2月に韓国の最高裁で懲役1年6か月、執行猶予2年の刑が確定した。しかし、2014年、研究に復帰したと、ネイチャーやサイエンスが報道した。 日本では、理化学研究所の小保方晴子によるSTAP細胞事件が世界を騒がせた。2014年にネイチャーに論文が発表され若返りも不可能ではない夢の細胞現象だと一躍注目を浴びたが、世界の研究者達から再現不可能との疑義や論文の捏造等が指摘され、ほどなく捏造や改竄があったと認定されて論文は撤回され、論文に関わった同研究所発生再生科学総合研究センター副センター長の笹井芳樹の自殺にまで発展する騒動となり、結局STAP細胞の存在は確認できなかったと結論づけられた。 日本は、不正研究に対する認識が欧米に近づきつつあるとはいえ、欧米に比べ処分はかなり甘い。また処分の軽重もバラバラである。学術界から追放されない不正研究者も多数存在する。ナイロンザイル事件における公開実験で不正を行った東京製綱と大阪大学工学部教授の篠田軍治には処分は無く、篠田は日本山岳会の名誉会員になっている。 学位論文で捏造が発覚すれば、欧米の場合、かつて授与された学位が取り消されることが多い。日本は欧米の基準を徐々に採用しつつある。例えば、東京大学は、2005-2007年に博士号を授与した3人の元大学院生の博士論文にデータ捏造や改竄があったという理由で、2015年3月27日、博士号を取り消した。 なお、ヘンドリック・シェーンの場合は幾分特殊である。2004年、ヘンドリック・シェーンは、米国のベル研究所の調査委員会からデータ捏造で有罪であるとされた。その後、ドイツのコンスタンツ大学から博士号がはく奪された。シェーンの不正研究は米国のベル研究所でなされたものであって、彼がドイツのコンスタンツ大学で博士号を取得した研究は問題視されていなかった。にもかかわらず、博士号がはく奪されたのである。コンスタンツ大学職員によれば、ベル研究所で不正研究を行なったという理由でコンスタンツ大学の博士号がはく奪されたとのことである。 日本では、博士論文に不正がない研究者が、後に、別の研究で不正研究をしたからという理由で、博士号が取り消された例はない。 欧米では学位以外の免許などが取り消される例もあり、捏造論文を執筆したアンドリュー・ウェイクフィールドは医療行為ではなく研究の不正により医師免許を剥奪されている。
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