父と娘
『ゴリオ爺さん』(バルザック) 製麺業で財を築いたゴリオは、妻の死後、愛情をもっぱら2人の娘にそそぎ、莫大な持参金をつけて姉娘を伯爵に嫁がせ、妹娘を銀行家に嫁がせる。2人の娘は結婚後もゴリオに金の無心を続け、ゴリオは娘たちの幸福を願って貴重な銀器を売り、年金を解約して金を工面する。やがてゴリオは無一文になり、病に倒れるが、娘たちは見舞いに来ず、臨終にも間に合わなかった。
『花嫁の父』(ミネリ) 弁護士スタンリーは妻との間に、1人の娘と2人の息子をもうけていた。20歳になる娘ケイに恋人ができ、娘の希望どおりに華やかな結婚式が行なわれる。新婚夫婦は旅行に出かけ、その夜スタンリーは、娘のいない寂しさをかみしめる。そこへケイが旅先から電話をかけて来たので、スタンリーはたちまち元気を回復し、「結婚しても娘はずっと娘だ」と妻に言う。
『晩春』(小津安二郎) 早くに妻を亡くした初老の大学教授曾宮は、娘紀子(のりこ)と2人暮らしをしている。紀子は適齢期をすぎた27歳であるが、結婚したがらず、いつまでも父と2人でいたい、と訴える。しかし結局、曾宮に諭(さと)されて、紀子は見合い結婚をする(*→〔結婚の策略〕2)。結婚式の夜、帰宅した曾宮は1人でりんごの皮をむく。その手が途中で止まり、彼はうなだれる。
『秋刀魚の味』(小津安二郎) 会社重役の平山は、早くに妻を亡くした。長男は結婚して独立し、家には次男と娘がいる。娘の路子は24歳で結婚適齢期だが、平山はまだ路子を手放したくない。ある日平山は、中学生時代の恩師・佐久間先生に会う。先生は今、場末の中華ソバ屋となって、生計を立てている。先生も奥さんを亡くし、1人娘に家事をさせているうち、娘は婚期を逃して、いまだに独身だった。老父と中年娘の2人暮らしを見た平山は、「路子を嫁にやろう」と決心した。
*貧農の父親が娘を嫁に出さず、田畑の仕事をさせる→〔父娘婚〕5の『土』(長塚節)。
★4.いつわりの父と娘。
『ロリータ』(ナボコフ) 30代後半のハンバート・ハンバートは、10代前半の少女ロリータと関係を結ぶ。2人は父娘をよそおってアメリカ各地の自動車旅行を続け、モーテルを転々とする。
『歌行燈』(泉鏡花) 能楽界の御曹司恩地喜多八は、按摩宗山と芸競べをして彼を憤死させる。宗山の娘お袖は父の死後芸者に売られ、流浪の門付けとなった喜多八に巡り合い、舞を教えられる。父の仇である喜多八に、お袖は恋心を抱く→〔宿〕5。
『敵討義女英(かたきうちぎじょのはなぶさ)』(南杣笑楚満人) 小しゅんは若侍岩次郎と恋仲になるが、岩次郎が兄の仇として狙う舟木逸平とは、小しゅんの父竹筍斎のことだった。小しゅんは、「舟木逸平は父の友人で、今宵泊まるから討て」と岩次郎に教え、自分が父の身代わりに座敷に臥して、首を討たれる→〔仇討ち〕2。
『二都物語』(ディケンズ) 非道なサン・テヴレモンド侯爵兄弟が、医師マネットをバスティーユの独房に18年間幽閉する。マネットは侯爵兄弟とその子孫を告発するが、後にマネットの娘ルーシーの夫となったチャールズは、侯爵の子であった。心ならずもマネットは、愛娘の婿を断頭台に送らねばならなくなる→〔瓜二つ〕1。
『御曹子島渡』(御伽草子) 蝦夷が島のかねひら大王の娘あさひ天女は、御曹子義経と夫婦になる。義経の頼みにより、天女は、父王秘蔵の兵法の巻物を蔵から盗み出す。義経は巻物を書写して島を脱出し、怒ったかねひら大王は天女を八つ裂きにして殺す。
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