流行の背景と分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/01 02:06 UTC 版)
前述の少女漫画『L♥DK』の編集担当者によれば、「壁ドン」が流行した背景としていわゆる「草食系男子」に対する女性の苛立ち、および「男性から迫ってきて欲しいという気持ちの現れ」であるとの分析がなされているほか、「実際にはやりにくいが、あってもおかしくない行動であること」「様々な妄想ができる余地があること」「少女漫画は女子の願望を叶える為のファンタジーであり、男性から積極的に言い寄られる快感が絵になっている『壁ドン』は、その願望を満たしている」「異性に積極的に迫られるシチュエーションは恋愛漫画の黄金パターンであり、『壁ドン』も好みの異性に迫られたい、という読者の要望を反映させている」などの分析や、「『壁ドン』は恋愛に臆病になっている男性を奮い立たせる為のメッセージ」であるなどの分析がなされている。少女漫画におけるヒーロー像の変遷が背景にあるとする指摘もあり、1980年代末から1990年代初頭にかけて、「品行方正で優しい王子様」ではなく、いわゆる「俺様キャラ」「Sキャラ」が一般化し、『花より男子』(『マーガレット』1992年 - 2004年連載)、『イタズラなKiss』(『別冊マーガレット』1990年 - 1999年連載)などに見られる「少し意地悪でクール」な男性キャラが人気を集めたことに起因するとの意見がある。また、急速に広まった背景としてSNSの普及が挙げられており、「真似しやすく、絵になる行為」であることから実際に「壁ドン」を行ってSNSに投稿する者が増えたとの指摘がある。 「壁ドン」シーンそのものは、『ベルサイユのばら』(『マーガレット』1972年 - 1973年連載)、『王家の紋章』(『月刊プリンセス』1976年から連載中)、『ときめきトゥナイト』(『りぼん』1982年 - 1994年連載)など、少女漫画における「定番シーン」として昔から存在していたとも報じられている。昔の作品における「壁ドン」は「男らしさを誇示して求愛する『強要』の壁ドン」であり、現代の作品における「壁ドン」は「普段は強くない男でも、何かあった時には男らしさを誇示しなければ男女の関係を縮められない。男の弱さが出ている『懇願』の壁ドン」であるとして、時代によって「壁ドン」の持つ意味合いは違っているとの分析もある。 以前から描写されてきた「壁ドン」が突然ブームになった要因として、「『壁ドン』という分かりやすい名前を得たこと」および「女性が強くなったこと」とする指摘がある。1970年代の少女漫画における愛情の発露シーンは「女性の手首を掴み、抑えこむ」、すなわち女性の身動きを取れなくする描写が多かったのに対して、「壁ドン」は横に動けばすり抜けることが可能なことから「男性が一瞬強く出るも、後の判断は女性に委ねられている」「『壁ドン』は女性に委ねられて成り立っている」との分析がなされている。 「壁ドン」は「登場人物同士の関係性を示す『記号』を多く含むことができる発明である」との指摘もなされており、例えば男性が壁に付けている部分が手のひらであるのか肘の部分であるのか、片手であるのか両手であるのかなどによって距離感に違いを出したり、状況によって壁ではなく本棚や窓を利用することもできたり、目を合わせているか逸らしているのかで心理的な描写もできるようになっているとしている。
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