氷の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/27 04:30 UTC 版)
結晶 無色透明(水以外の不純物や空気が混じらない場合)で、六方晶系の結晶を持つ。融点は通常の気圧で摂氏0度。ただし、圧力を変えることで相変化を起こし、結晶構造や物理的性質に差がある、様々な高圧相氷になることが知られている。この場合、我々が普段目にする「普通の」氷は「氷I」と呼ばれる。2021年現在、圧力が高い状態において氷IIから氷XIX(19)まで発見されている。特に、極めて高い圧力下では、水素結合が縮んで水分子の配列が変わる。このように様々な相が存在することを多形という。 熱 氷は特異的に凝固熱、融解熱が大きい。例えば融解する時に、潜熱として1キログラムあたり約 80 kcal (333.5 kJ) の熱を周囲から奪う。これは同量の水を0℃から80℃まで温めることができるほどの熱量である。雪を食べると体力を消耗するとして、寒地では(特に遭難時)禁忌とされている。また、氷表面の水分子は結合が不完全でベアリングボールのように転がりやすく、氷表面は滑りやすい。この現象は2018年5月にドイツのマックス・プランク研究所の永田勇樹らのグループによって解明された。氷点下の-7℃でこの性質は最も強く現れ、スケート、スキー、カーリング、そりなどはこの性質を活かしている。また、氷が溶け始めると逆に滑りにくくなる。従来、氷表面が滑る仕組みは圧力による界面の融解で説明されてきたが、象が氷上でハイヒールを履いて立っても圧力は大幅に不足する。 体積 通常気圧において凍る際は体積が約11分の1増加する。すなわち、比重が0.9168 と小さくなり、水に浮く。物質は温度が低くなるほど分子の振動が小さくなるため、通常であれば温度が低くなるほど密度は大きくなり、従って気相よりも液相のほうが密度が大きく、液相よりも固相のほうが密度が高い。このように固相の方が液相よりも密度が低い物質は非常に珍しい。これは液相の水分子が水素結合で強固に結びついており、固相の場合よりも分子間の距離が小さいことが原因である。また、密閉された状態で凍ると周囲の物質を押し出し、時に破壊する。例えば岩の隙間に水が入り込んで氷になると、岩を破壊する。生物の細胞も凍結すると破壊され、生物の凍傷や凍死の原因となる。冬季の寒冷地では凍結による水道管の破裂を防ぐため、夜間は水抜栓を用いて水を冷気の及ばない地中に落とし、凍結を防ぐ。清涼飲料水類の缶にも「凍らせないでください」という注意書きが書かれている。水に溶けた炭酸は水が凍ると気体として追い出されてしまい、炭酸水を容器に入れて凍らせると爆発する危険がある。 不純物 液体が固体になる時、溶解している物質は結晶構造に加わらずに濃縮される。冷蔵庫などで氷を作ると、内部に白く気泡が残されるのはこのためで、気泡中には、溶けていた空気(二酸化炭素やその他不純物)が閉じ込められている。一方、透明な部分は不純物が少ない、純度が高い水になっている。透明な氷を作るためには、なるべく純粋な水をゆっくり凍らせる必要がある。一般に、一度煮沸して気体を追い出したり、大部分が凍結した段階で不純物が集まった水の部分を捨てたりするなどの方法が取られる(濃縮された方に用がある場合は、凍結濃縮法と呼ばれる)。
※この「氷の特徴」の解説は、「氷」の解説の一部です。
「氷の特徴」を含む「氷」の記事については、「氷」の概要を参照ください。
- 氷の特徴のページへのリンク