正社員の変容
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 14:29 UTC 版)
バブル崩壊から2000年代にかけての長期化した不況により、正社員を取り巻く制度にも変化が起こっている。正社員を特徴付けていた長期雇用慣行や賃金形態の仕組みは多様化していった。 雇用 不況により企業は人件費の削減が求められ、正社員の採用自体が抑制される傾向にある。さらなる人件費の削減として、リストラ(リストラの本来の意味等は、リストラを参照)等から、正社員に対する解雇(実務的には正社員の解雇は極めて困難なため、硬軟あらゆる手段を用いて自主的に退職するよう仕向け、整理解雇は基本的に最終手段である)がおこなわれ、終身雇用制度は崩壊した。 処遇 年功序列から成果主義への処遇の変化が柱である。勤続年数よりも職務遂行能力がより重視されるようになり、仕事の成果を賃金や昇進・昇格に反映させるよう評価体制が変更されるようになった。総合職・一般職の区分を設けた企業では総合職でないと幹部級の役職には就けない。労働組合についても加入率が低下している。 もっとも、行き過ぎた既存の形態の変更については異論も存在し、終身雇用は長期雇用によって企業の技能・士気を高水準で維持できるという経済合理性の評価や(詳しくは終身雇用#長期雇用の経済合理性を参照)、一度導入した成果主義の見直し(例えば、1993年に初めて成果主義による賃金体系を導入した富士通は、2001年4月に制度を見直している)といった動きも出た。不況を脱しつつある2010年代以降においては、一部の専門職やベンチャー企業を除けば、完全な成果主義をとる企業はまれで、年功序列と成果主義の双方をどの割合で組み合わせるかが処遇の中心となっている。 しかし、こうした正社員像の変化はもっぱら大企業に特有のものである。中小企業の従業員は大企業の従業員よりも身分が不安定で給与が安い傾向がみられ、正社員でありながら福利厚生がほとんどない場合もある。昨今は成果主義の導入や、昇進につれて給与が上がらないのに仕事量が倍増する管理職など、正社員とはいえ収入が安定しないケースも出てきている。サービス残業が常態化したため、時給制の非正規社員より時間当たりの報酬が少ない正社員も珍しくはない。健康面でもサービス残業、名ばかり管理職、リストラによる仕事量の増加により体を壊して休職したり辞めたりする正社員が増えている。不況期の雇用調整についても、配転、出向の受け皿に乏しく、より直接的な希望退職の募集、整理解雇が行われ、また雇用調整をするまでもなく倒産、全員解雇に至るケースもある。
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