正確性、便益性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/14 06:51 UTC 版)
「ウィキペディアの健康情報」の記事における「正確性、便益性」の解説
2007年の研究では、アメリカ合衆国において最もよく行われている手術の手順についてのウィキペディアの記事のサンプルについての検証が行われた。その結果、85.7パーセントのサンプルについて、患者にとって適切なものであることが示され、さらにこれらの記事は「特筆すべきほど高いレベルの内部妥当性(英語版)」を持っていることが明らかになった。しかし、同じ研究では、ウィキペディアの完全性について問題があるという問題を提起し、検証が行われた記事のうち62.9パーセントしか「危機的な遺漏」の存在から解放されていないことを示した。明くる2008年に行われた研究では、ウィキペディアにおける医薬品についての情報は、伝統的な方法で編集されているインターネット上のデータベースであるメドスケープ(英語版)において提供されている同じ薬品についての情報に比べ、記事で示されている観点は狭く、完成度は低く、そしてより多くの不合理な遺漏を含んでいることを指摘した。その後、2010年に行われた研究では、ウィキペディアの骨肉腫についての記事は見苦しくないほどの質を保っているが、アメリカ国立がん研究所 (NCI)のページの方がよりよかったことが明らかになっている。この論文の著者は、ウィキペディアはより高品質な情報源への外部リンクを含んでいるべきであると結論付けた。 翌2011年には、ウィキペディアの50本の医療についての記事についての評価が行われた。それによると、これらの記事で参照されている情報源の56パーセントが高い評価を受けているものであるとみなすことができ、平均すれば、各記事は29の高く評価できる情報源を参照している。同年には、スタチンについての5本の記事についての検証を行った研究が発表された。この研究は、これらの記事には、不正確もしくは誤解を与えるような情報は含まれていないものの、医薬品の効用や、服用する上での禁忌についての情報が書かれていないことがしばしばあると結論付けた。さらに、同じ2011年には、最もよく承認されている20種類の医薬品についてのウィキペディアの記事についての検証を行ったという内容の研究が発表された。この研究においては、20件の記事のうち7件は他の情報編を全く参照していないことが明らかになり、「ウィキペディアは一貫して、正確かつ完全であり、さらには他の情報源を参照して書かれている、投薬についての情報を提供していない」と結論付けられた。 年が明けて2012年になると、サプリメントについての記事の評価が行われ、その結果、ウィキペディアの記事はしばしば不完全であり、記事の質は様々であり、時にはサプリメントについての高品質の情報源を参照していない場合もあると結論付けられた。 次の2013年には、「Journal of Medical Internet Research(英語版)」に投稿された、洞察的な考察において、ウィキペディアと、その他の誰でも編集に参加できるウィキサイトの使用についての存在する証拠を要約した。それによれば、ウィキサイトから利用可能な情報源は、まず初めに結論が書いてある場所を探さなければならない可能性があるような、一次資料である研究論文よりは、観察調査を行った論文であることが多いことが判明した。 さらにその翌年、2014年には、代替医薬品(CAM)に関するウィキペディアの記事全97件についての検証を行ったとする論文が発表された。当該論文によれば、97件の記事のうち4パーセントが良質な記事として認定されており、ウィキペディアにおける代替医薬品についての記事は、従来の治療法(英語版)についての記事と比べて、特筆すべきほど記事が短い傾向にあることが判明した。同年5月に「The Journal of the American Osteopathic Association(英語版)」に掲載された論文によれば、アメリカ合衆国において、最も医療費がかかっている10の疾患についてのウィキペディアの記事のほとんどが、査読を受けている標準的な情報源と比べて、多くの間違いを含んでいることが判明した。この論文が発表されたのに続いて、他の多くのマスメディアによって、読者はウィキペディアに掲載されている医学についての情報を信頼すべきではないと報道された。しかし、これらの健康についての項目に貢献しているウィキペディアンはウィキペディアを擁護し、この研究を批判した。彼らは、この研究において示されている結論が、論文内で示されているデータによって証明されていないなどの、初歩的な方法論的欠陥を深刻に抱えていると主張した。 さらに、同じ2014年の研究では、FDAが医薬品についての新たな安全性の警告を発表した際には、検証が行われたウィキペディアの記事の41パーセントで、発表から2週間以内にそれらの医薬品についての記事が更新され、新しい安全性の情報が反映されていることが明らかになった。また、23パーセントのウィキペディアの医薬品についての記事は、安全性についての新しい情報を反映するまでに平均しておよそ40日以内しかかかっていないものの、残る36パーセントの記事では1年以内に安全性についての新しい情報が更新されていないことも明らかになった。同年には、薬理学の教科書に掲載されている医薬品についての情報と、ウィキペディア英語版とウィキペディアドイツ語版に掲載されている比較可能な情報を選び出して行われた研究の結果が公表された。それによると、ウィキペディアにおける医薬品の記事は、薬理学を専攻する大学院生にとって必須な情報の大部分を網羅しており、しかも正確であることが判明した。 年が明けて2015年に入ると、MMRワクチンと自閉症の関係についての論争(英語版)を取り扱ったいくつかのウェブサイトは、ウィキペディアの記事は多くがワクチン接種賛成派の観点から記述されていることを明らかにした。研究では、ワクチンは非常に物議を醸している主題であるとしたうえで、このようなワクチン推進の姿勢は学術的な参考文献を記事に掲載することを厳しく要求している熟練した編集者を惹きつけていることが要因として挙げられるとしている。翌2016年の研究においては、ウィキペディアに掲載されている医薬品についての情報は、医学の情報源を提供するウェブサイトであるTruven Health Analytics(英語版)の運営するウェブサイトである「Micromedex」と比較し、正確性、網羅性ともに低いことが明らかになった。さらに次の2017年に行われた研究においては、最も人気のある33の医薬品についての、投薬法についての説明が記載されているウィキペディアの記事の正確性を、医薬品の添付文書の正確性と比較した。この研究においては、ウィキペディアの記事は医薬品の添付文書と比べて、正確性は一般的に低いことが明らかになった。
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