松本たかしとは? わかりやすく解説

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まつもと‐たかし【松本たかし】

読み方:まつもとたかし

[1906〜1956]俳人東京生まれ本名、孝(たかし)能楽師松本長(ながし)の長男病弱のため能を断念高浜虚子俳句学びホトトギス同人となる。俳誌「笛」を主宰。著「」「石魂(せきこん)」など。


松本たかし

読み方まつもと たかし

宝生流能役者東京生。本名は孝。父長は名人うたわれた人。6才から家元薫陶を受ける病弱のため能を断念し俳句に志をたて高浜虚子師事。たかしの俳句当初から完成度が高いといわれる読売文学賞受賞昭和31年(1956)歿、50才。

松本たかし

松本たかしの俳句

あの雲が飛ばす雪かや枯木原
いま一つ椿落ちなば立去らん
たんぽぽや一天玉の如くなり
とつぷりと後ろ暮れゐし焚火かな
ひく波の跡美しや桜貝
ゆたかなる苗代水の門邊なり
セルを着て遊びにゆくや東京へ
チチポポと鼓打たうよ花月夜
一条の激しき水や青薄
仕る手に笛もなし古雛
何処までも一本道や桃の中
入海の更に入江の里の秋
八方に山のしかかる枯野かな
十棹とはあらぬ渡しや水の秋
南縁の焦げんばかりの菊日和
南の海湧き立てり椿山
叔父の僧姪の舞妓や大石忌
向日葵に剣のごときレールかな
夢に舞ふ能美しや冬籠
大木にして南に片紅葉
大空に唸れる虻を探しけり
山山を統べて富士在る良夜かな
山越えて伊豆へ来にけり花杏
恋猫やからくれなゐの紐をひき
我去れば鶏頭も去りゆきにけり
我庭の良夜の薄湧く如し
日の障子太鼓の如し福寿草
春寒や貝の中なる桜貝
春愁や稽古鼓を仮枕
春潮の彼処に怒り此処に笑む
曼珠沙華に鞭うたれたり夢さむる
木曽谷の奈落に見たる銀河かな
枯菊と言捨てんには情あり
水仙や古鏡の如く花をかかぐ
海中に都ありとぞ鯖火もゆ
深雪晴非想非非想天までも
渋柿の滅法生りし愚さよ
渡鳥仰ぎ仰いでよろめきぬ
炭竃に塗込めし火や山眠る
物の芽のほぐれほぐるる朝寝かな
玉の如き小春日和を授かりし
目白の巣我一人知る他に告げず
眼つむれば駆けりゐる血や日向ぼこ
秋晴の何処かに杖を忘れけり
箱庭とまことの庭と暮れゆきぬ
綺羅星は私語し雪嶺これを聴く
羅をゆるやかに著て崩れざる
芥子咲けばまぬがれがたく病みにけり
苗代の二枚つづける緑かな
葉牡丹の火むら冷めたる二月かな
 

松本たかし

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/10 03:34 UTC 版)

松本 たかし(まつもと たかし、1906年明治39年)1月5日 - 1956年昭和31年)5月11日)は、東京都出身の俳人。本名は松本孝。能楽師の家に生まれ能を志したが、病のために断念、高浜虚子に師事し俳句に専心した。俳誌「笛」を創刊・主宰。芸術性の高い高雅な句を作り、「ホトトギス」では川端茅舎中村草田男らと並び称された。

略歴

東京市神田区猿楽町(現・千代田区猿楽町)生まれ。代々江戸幕府所属であった宝生流役者の家に長男として生まれる。父は能楽師の松本長。弟の松本惠雄も能楽師となりのちに人間国宝となる。作家の泉鏡花は親戚(長が鏡花の従兄弟)。

満5歳より能の修業を始める。錦華小学校卒業後、在宅で漢学国文学を学びつつ能の修行に専心するも、1920年に14歳で肺尖カタルと診断される。静岡県静浦にて療養中、病床を見舞った父が残していった「ホトトギス」を読んで俳句に興味を持ち、1922年に父の能仲間の句会「七宝会」に参加。翌年より俳句を高浜虚子に師事する。

1924年より神経衰弱に悩むようになり、1926年、療養を兼ねて鎌倉市浄明寺に移住。6月に療養中の句が「ホトトギス」に4句入選し、これを機に能役者になることをほぼ諦め俳句に専心するようになる。1929年、「ホトトギス」巻頭を取り23歳で同人に推される。この頃より派遣看護婦であった高田つや(俳号:松本つや女)と夫婦生活に入った。1931年、川端茅舎高野素十と知り合い親交を結ぶ。1935年には父が脳溢血で死去し生活が困窮するが、虚子から与えられた仕事が生活の支えとなった。

1945年、岩手県稗貫郡へ疎開。10月に島村茂雄の誘いで上京し、1946年に島村の援助をうけて「笛」を創刊・主宰。上京後は杉並区久我山に定住した。その後「笛」に「茅舎研究」を連載。1948年には能の師であった宝生九郎をモデルにした伝記小説『初神鳴』を「苦楽」に発表。この小説はのちに映画化された(1953年、伊藤大輔監督による『獅子の座』)[1]。1954年、第四句集『石魂』(笛発行所、1953年)にて第5回読売文学賞(詩歌俳句賞)を受賞。

1956年2月、軽い脳溢血を起こし言語喪失状態となり句作途絶。「避けがたき寒さに坐りつづけをり」が最後の句となった[2]。同年5月11日、心臓麻痺により久我山の自宅で死去。墓所は三浦市本瑞寺。戒名は青光院釈一管居士[3]。没後、文庫版『松本たかし句集』(角川書店、1956年)、『たかし全集』(全4巻)(笛発行所、1965年)などが刊行されている。

第一句集『松本たかし句集』欅発行所、1935年 献辞に「父に捧ぐ」とある

第二句集『鷹』竜星閣、1938年

第三句集『野守』甲鳥書林、1941年

第四句集『石魂』笛発行所、1953年 第5回読売文学賞受賞

第五句集『火明』笛発行所、1957年

作風・評価

  • チヽポヽと鼓打たうよ花月夜
  • 春月の病めるが如く黄なるかな
  • 海中に都ありとぞ鯖火燃ゆ
  • 夢に舞ふ能美しや冬籠
  • 水仙や古鏡のごとく花をかゝぐ
  • 雪だるま星のおしやべりぺちやくちやと

などが代表句。虚子からの教えを「只管写生」(ひたすら写生)であると唱えつつ、能で培った美意識に支えられた典雅で格調の高い句を作った[4]。互いに傾倒しあった川端茅舎からは「生来の芸術上の貴公子」と評されている。茅舎とは境遇や作風に通じるものがあったことから「句兄弟」と呼ばれたが、たかしは茅舎に比べ耽美的、楽天的とも評されている[4]。また茅舎とおなじく、たかしも「如く俳句」と呼ばれる比喩の句を多く作ったが、三村純也は「春月の」の句を指して、茅舎に比べたかしの「如く」はより感覚的であると評している[5]

脚注

  1. ^ 『松本たかし』 161頁
  2. ^ 『松本たかし』 151頁
  3. ^ 岩井寛『作家の臨終・墓碑事典』(東京堂出版、1997年)302頁
  4. ^ a b 『現代俳句大事典』 529頁
  5. ^ 『現代俳句大事典』 530頁

参考文献

  • 朝日新聞社編 朝日文庫 現代俳句の世界『川端茅舎松本たかし集』朝日新聞社、1985年
  • 上村占魚編著 昭和俳句アルバム27『松本たかしの世界』梅里書房、1989年
  • 山本洋子編 『松本たかし』 蝸牛俳句文庫、1997年
  • 上村占魚著『松本たかし俳句私解』紅書房、2002年
  • 稲畑汀子大岡信鷹羽狩行監修 『現代俳句大事典』 三省堂、2005年

外部リンク


松本たかし

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/09 10:15 UTC 版)

宝生九郎知栄」の記事における「松本たかし」の解説

俳人・松本たかしは、九郎門弟松本長長男である。病身のため能楽師の道を断念して俳句の道に進んだが、生涯3本小説発表している。その「初神鳴」「殺生石」「一番能」は、いずれも若き日宝生九郎主人公とした作品である。「初神鳴」は「獅子の座」のタイトル1953年大映映画化され少年時代九郎(石之助)を、子役時代津川雅彦演じている。

※この「松本たかし」の解説は、「宝生九郎知栄」の解説の一部です。
「松本たかし」を含む「宝生九郎知栄」の記事については、「宝生九郎知栄」の概要を参照ください。

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