加藤郁乎とは? わかりやすく解説

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加藤郁乎

加藤郁乎の俳句

≪Que sais-je?≫傾き立てるいたどり
あたゝかや白泉居士の新しさ
あらかたは二番煎じに初時雨
いろいろの枕の下を野分かな
おのづから俳は人なりこぞことし
おもひでの雲雀来て鳴く髪の中
お中元おなじやうなる句集来る
かげろふを二階にはこび女とす
かげ口は男子に多し秋の暮
かならずや具眼の士あり葉鶏頭
このひととすることもなき秋の暮
しぐるるやくだまくひとの衿糞
しぐるゝや異端もやがて傳統に
たゞしくは萩にまぎれし萩の径
とりめのぶうめらんこりい子供屋のコリドン
はつとする古句が相手よ冬籠
もがり笛よがりのこゑもまぎれけり
メタフィジカ麥刈るひがし日を落とし
一対の男女にすぎぬ夜長かな
一満月一韃靼の一楕円
一行のイデエ流るゝものを涸らす
三夕やさいふをさがす秋の暮
人柄が名所なりけりけふの月
俳々と馬鹿の一念寒たまご
俳人も小粒になりぬわらび餅
俳諧道五十三次蝸牛
六月の馬上にのこる鞭の音
冬の波冬の波止場に来て返す
切株やあるくぎんなんぎんのよる
初雁やその場に立ちてひらてみき
十五から我酒のみ出て小正月
古すだれ世にへつらはぬは手酌これ
売文は明日へまはして菊の酒
大人とうすうす気つく秋の暮
天の川ねむりの四肢の獅子となり
天命は詩に老いてけり秋の暮
天文や大食の天の鷹を馴らし
定型にすぎぬ凡句やにぎり鮓
家桜かざらぬひとは宝なり
小火と云ふいはゞ現代俳句かな
小細工の小俳句できて秋の暮
押入の似合ふおひとや秋の暮
日は歸去來日は智慧の樹の望郷
春の泥御用詩人が世なりけり
春時雨一行の詩はどこで絶つか
春時雨十人とゐぬ詩人かな
春立つや一生涯の女運
昼顔の見えるひるすぎぽるとがる
朝顏におどろく朝の女かな
本物は世に出たがらず寒の鰤
 

加藤郁乎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/05 04:52 UTC 版)

加藤 郁乎(かとう いくや、1929年1月3日 - 2012年5月16日)は、日本詩人俳人俳諧評論家。

経歴

東京府に生まれる。父は早稲田大学教授であり、長谷川零余子に師事した俳人加藤紫舟(本名・中庸)。

1951年、早稲田大学文学部演劇科卒業。 卒業後は日本テレビに勤務し、また商事会社を経営。

俳句は父に教えを受けつつ、日野草城西東三鬼高柳重信の影響を受け、父の主宰誌『黎明』に新芸術俳句を発表。1950年に父が没してのちは『黎明』の主宰を継いだ。のちに詩を吉田一穂西脇順三郎に師事した。昭和30年代には『俳句評論』『ユニコーン』などの前衛俳句誌にも参加した。 初期の代表作に「冬の波冬の波止場に来て返す」「昼顔の見えるひるすぎぽるとがる」「天文や大食(タージ)の天の鷹を馴らし」などがあり、西欧詩に学んだ詩的実験を定型俳句で展開し、俳壇の内外で評判を得た。

俳句、詩、評論の分野でさかんに発表し、1972年に文筆家として独立。江戸俳諧研究にも取り組んだ。句作も後年は江戸趣味・俳諧趣味に傾き「小細工の小俳句できて秋の暮」「俳人も小粒になりぬわらび餅」のような句を作った。

澁澤龍彦松山俊太郎池田満寿夫など異端的文学者との交友でも知られ[1]、澁澤が『血と薔薇』の編集長を務めていた時期には、同誌の販売促進のため澁澤を『11PM』に出演させたこともある。回想記『後方見聞録』の文庫版増訂時には、当時澁澤の妻だった矢川澄子との不倫を告白して物議をかもした[2]

1998年、自身の単独選考による加藤郁乎賞を創設、後進の育成にも力を注いだ。2001年、『加藤郁乎俳句集成』により二十一世紀えひめ俳句賞富澤赤黄男賞受賞。2005年、『市井風流 - 俳林随筆』により第5回山本健吉文学賞評論部門受賞。2011年、句集『晩節』により第11回山本健吉文学賞俳句部門受賞。

2012年5月16日に心不全で死去[3]。83歳没。

加藤郁乎賞

加藤郁乎の単独選考による文学賞。句集、評論などに与えられた。

  • 第1回(1998年度)手島泰六 『手島右卿論』
  • 第2回(1999年度)黛まどか 『ら・ら・ら奥の細道』
  • 第3回(2000年度)辻井喬 『小説石田波郷 命あまさず』 
  • 第4回(2001年度)筑紫磐井 『定型詩学の原理』 
  • 第5回(2002年度)辻桃子 『饑童子』
  • 第6回(2003年度)復本一郎 『子規との対話』 
  • 第7回(2004年度)有馬朗人 『不稀』
  • 第8回(2005年度)角川春樹 『JAPAN』 
  • 第9回(2006年度)仁平勝 『俳句の射程』
  • 第10回(2007年度)森村誠一 『小説道場』
  • 第11回(2008年度)伊藤勲 『加藤郁乎論』
  • 第12回(2009年度)坂口昌弘 『ライバル俳句史』
  • 第13回(2010年度)安部元気 『一座』
  • 第14回(2011年度)戸恒東人 『誓子 - わがこころの帆』

著書

句集

  • 『球体感覚』(俳句評論社) 1959
  • 『えくとぷらすま』(冥草社) 1962
  • 『形而情学』(昭森社) 1966
  • 『牧歌メロン』(仮面社) 1970
  • 『微句抄』(南柯書局) 1974
  • 『定本加藤郁乎句集』(人文書院) 1975
  • 『佳気颪』(コーベブックス) 1977
  • 『江戸桜』(小沢書店) 1988
  • 『粋座』(ふらんす堂) 1991
  • 『加藤郁乎句集』(砂子屋書房) 1994
  • 『初昔』(ふらんす堂) 1998
  • 『加藤郁乎俳句集成』(沖積舎) 2000
  • 『實』(文學の森) 2006
  • 『晩節』(角川学芸出版) 2010 - 山本健吉文学賞俳句部門受賞
  • 『了見』(書肆アルス) 2013

詩集

  • 『終末領 詩集』(思潮社) 1965
  • 『ニルヴァギナ』(薔薇十字社) 1971
  • 『加藤郁乎詩集』(思潮社現代詩文庫) 1971
  • 『詩篇』(思潮社) 1974
  • 『姦吟集 六行詩集』(林檎屋) 1974
  • 『エジプト詩篇』(立風書房) 1981
  • 『閑雲野鶴抄』(沖積舎) 1999
  • 『加藤郁乎詩集成』(沖積舎) 2003

評論・研究

  • 『眺望論 詩論集』(現代思潮社) 1964
  • 『遊牧空間』(三一書房) 1970
  • 『かれ発見せり』(薔薇十字社) 1972
  • 『後方見聞録』(コーベブックス) 1976、のち学研M文庫 2001
  • 『夢一筋 近代文学逍遙』(コーベブックス、南柯叢書) 1976 - 瀧口修造
  • 『旗の台管見 書評集』(コーベブックス) 1977
  • 『半風談』(九藝出版) 1978
  • 『意気土産』(小沢書店) 1979
  • 『江戸の風流人』(小沢書店) 1980 
  • 『俳諧志』(潮出版社) 1981、のち新編 岩波現代文庫(全2巻) 2014
  • 『江戸俳諧歳時記』(平凡社) 1983、のち平凡社ライブラリー(全2巻) 2007
  • 『続 江戸の風流人』(小沢書店) 1983
  • 『古意新見 筆払1』(小沢書店) 1988
  • 『閑談前後 筆払2』(小沢書店) 1988
  • 『日本は俳句の国か』(角川書店) 1996
  • 『江戸俳諧にしひがし』(飯島耕一共著、みすず書房大人の本棚) 2002
  • 『市井風流 俳林隨筆』(岩波書店) 2004 - 山本健吉文学賞評論部門受賞
  • 『坐職の読むや』(みすず書房) 2006
  • 『俳の山なみ 粋で洒脱な風流人帖』(角川学芸出版) 2009
  • 『俳人荷風[4]』(岩波現代文庫) 2012

小説

  • 『エトセトラ』(薔薇十字社) 1973
  • 『腟内楽』(大和書房) 1975

編著

  • 『むらさき控 新編江戸歳事記』(小沢書店) 1985

脚注

  1. ^ 豪放磊落な俳人 加藤郁乎展 光記念館|HIKARU MUSEUM”. 光ミュージアム. 2015年5月18日閲覧。
  2. ^ 後方見聞録. 学研M文庫2001. (1976). ISBN 978-4059020493 
  3. ^ “加藤郁乎氏が死去(詩人、俳人)”. 産経新聞. (2012年5月17日). オリジナルの2012年7月15日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/dsYq 
  4. ^ 「荷風俳句集」を編んでいる。岩波文庫) 2013

参考文献

関連文献

  • 仁平勝 『加藤郁乎論』 沖積舎, 2003
  • 坂口昌弘著『平成俳句の好敵手』文學の森
  • 伊藤勲 『加藤郁乎新論』 沖積舎, 2009

関連項目

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