新冠発電所
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/29 14:02 UTC 版)
新冠発電所は地下式の自流混合式揚水発電所として建設された。北海道初の揚水式発電所であり、現在完成している北海道内の全ての水力発電所では1983年(昭和58年)に完成した日高電源一貫開発計画のもう一つの中核施設である高見発電所と並ぶ最大級の発電所である。当時はオイルショックで国産再生可能エネルギーである水力発電が再認識されていたこと、及び奈井江発電所や伊達発電所など新鋭火力発電所が続々建設されており、火力発電との連携が可能な揚水発電が注目されていたこともあり、大きな期待を背負っての運転開始であった。 沙流川の河水も利用する奥新冠発電所から放流された水は新冠湖に貯えられる。そして下流に1969年(昭和44年)に完成した下新冠ダムの貯水池・下新冠調整池との間で揚水発電を行う。ピーク時発電であり、エアコンが頻繁に使用され、工場の操業も多くなる夏季や暖房器具が頻繁に使用される冬季において電力需要がピークとなる際に下新冠ダムと相互に水を運用することで最大20万キロワットの発電を行う。また、発電後放流される水が下流の新冠町に影響を及ぼさないようにするため、貯水池で放流量を平均化し下流への水量を一定にさせる「逆調整池」として岩清水ダムが利用される。岩清水ダムでは新冠町と北海道電力との間における取り決めにより、灌漑や漁業への影響を抑制するため新冠川の正常な流量を維持する目的で河川維持放流が常時実施されている。 下流の河川環境に配慮をしながら、新冠発電所で使用された水の一部は岩清水調整池からトンネルを通じて春別ダムへ送られる。春別ダムからは静内川に建設された静内ダムと高見ダムへ送水され、発電能力の増強・維持に利用されている。静内ダムの場合には、新冠ダムの完成によって一定量の水量が確保できるようになったことからダムに付設する静内発電所の増設が実施され、1979年(昭和54年)に全面運転が可能となった。 このように、新冠発電所は日高電源一貫開発計画の中心事業として、北海道のインフラ整備に貢献した。しかし2007年(平成19年)中国電力の土用ダムに始まった発電用ダムデータ改ざん問題は、全国の電力会社へ拡大し社会問題となったが、北海道電力においても新冠発電所の発電設備データが1974年の運転開始から改ざんされていたことが社内の内部調査で判明した。ダム本体への安全性に直接関わる問題ではないものの、電力会社の信頼を失墜させる結果となった。
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