敷地地盤高の決定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 07:31 UTC 版)
「福島第一原子力発電所」の記事における「敷地地盤高の決定」の解説
一木忠治が東芝レビューに投稿した記事によれば、整地面レベルを決定する際、通常のプラントでは建屋設備の配置、建設作業に必要な用地を経済的に造成できることが必要としていたが、原子力発電所の場合はそれに加えて、当時から次の点を考慮していたという。 高潮、津波への危害を回避すること 原子炉建屋の設置に適する場所であるかの検討(耐震性、岩盤支持の問題) 高潮、津波対策としては土木的には下記の2種の方法が挙げられている。 整地面レベルを高く取る 防潮堤、防波堤を構築する しかし、防潮堤、防波堤の構築は当時信頼度の点から好ましい手段とは見なされていなかった。そのため、整地面レベルの決定に際しては、「過去の記録あるいは何らかの科学的推論にもとづく最大の高潮や津波時の海水面レベルの上昇の想定値に多少の余裕を与えて」さらに岩盤支持の問題も考慮して最低の許容レベルが決定された、としている。 なお、津波の検討に使用された参考文献として小林健三郎は下記の文献を挙げている。 羽島徳太郎「日本太平洋岸における遠地津波」『東京大学地震研究所報』43, 46, 47、東京大学地震研究所、1965, 1967, 1969 1969。 1966年5月20日の講演にて田中直治郎は、30mの台地を23m掘削して海抜7m程度とする旨を述べていたが、同時に「GEから見積書と仕様書が出ると、配置、レベルについてはさらに多少の変更を要するので、請負業者とは打合わす必要があると思います」としていた。その後高波、津波に対して「十分安全な高さ」を考慮し上述のように海抜10mで決定、施工された。また、地下1階まであるマークIのような標準プラントでは、東芝レビューによれば整地面レベルから10m程度掘り下げたところに岩盤があるのが望ましいとされた。結局、1号機の原子炉建屋の底面は整地面より14mほど掘り下げられた高さに位置することになった。敷地地盤高がこのような形で決定したのは、定量的な比較検討を経たからで、小林健三郎は1号機の運転開始後、次のように振り返っている。 発電所敷地地盤高は、波浪および津波などに対する防災的な配慮とともに、原子炉および発電機建屋出入口の高さ、敷地造成費、基礎費、復水器冷却水の揚水電力料などがもっとも合理的で、しかも経済的となるように決定する必要がある。当地点付近の高極潮位は小名浜港においてO.P.+3.122m(チリ地震津波)であるので、潮位差を加えても防災面からの敷地地盤高はO.P.+4.000mで十分である。一方、地質条件より原子炉建屋の基礎地盤高をO.P.-4.0m(復水器天端高O.P.+9.8m)と決めたため、原子炉建屋の出入口との関係からみると、発電所敷地地盤高は1号機ではO.P.+10.0mが好ましく、2号機以降分は基礎地盤高を調整すれば、この地盤高に原子炉建屋の出入口を揃えることができる。次に170m×460mの陸上部の敷地造成に必要な掘削費、O.P.-4mの基礎地盤までの建物基礎掘削費および勾配1/20、幅員9.5mの進入道路の掘削費の合計額が最経済的となる敷地地盤高を求めた結果は図-8 の通りとなり、この結果からもO.P.+10m付近が最低値となることが明らかとなった。以上の結果により、陸上部の敷地地盤高をO.P.+10mと決定し、埋立部のポンプ室付近地盤高はO.P.+4.0mとした。 — 「福島原子力発電所の計画に関する一考察」『土木施工』1971年7月pp.121-122
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