提唱の経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 23:35 UTC 版)
社会学者・大野晃が、高知大学人文学部教授時代の1991年(平成3年)に最初に提唱した概念である。大野は元々、林業の衰退と再建を研究テーマにしていた。輸入木材によって日本国内の林業は衰退し、山村の人口減と高齢化、それにより、手入れの行き届かなくなった人工林(ことにスギやヒノキの針葉樹林)の荒廃、さらには集落そのものの消滅が進みつつあった。 大野は、集落の実態調査を進めてゆくうち、その現状を指摘するためには「過疎」という用語では実態とずれていると思ったという。そこで大野は、より深刻な実態を指摘するため、敢えて厳しい批判を受ける事を覚悟の上で「限界自治体」「限界集落」という用語を生み出すに至った。なお最初にこの概念が浮かんだのは、高知県吾川郡池川町(現仁淀川町)の岩柄集落である。 大野は、65歳以上の高齢者が地方自治体総人口の過半数を占める状態を「限界自治体」と名付けた。「限界集落」は、この定義を集落単位に細分化したものである。限界集落に次ぐ状態を「準限界集落」と表現し、55歳以上の人口比率が50%を超えている場合とされる。また、限界集落を超えた集落は「超限界集落」から「消滅集落」へと向かう。 大野によれば、2000年(平成12年)の時点で「限界自治体」となっているのは、高知県長岡郡の大豊町のみであるが、2015年(平成27年)には51自治体、2030年には144自治体が「限界自治体」に転落する(ただし、2005年(平成17年)以降の市町村合併は考慮に入れていない)。 2005年には、大豊町に加えて、群馬県甘楽郡の南牧村と福島県大沼郡の金山町および昭和村の1町2村が限界自治体となった。2010年の国勢調査によれば、限界自治体の数は11町村である。具体的には仁淀川町、群馬県多野郡神流町、奈良県吉野郡川上村、徳島県勝浦郡上勝町、長野県下伊那郡の天龍村、大鹿村、和歌山県東牟婁郡北山村が該当する。 2015年の国勢調査では、限界自治体の数は18町村である。具体的には、南牧村、天龍村、川上村、金山町、神流町、大豊町、昭和村、上勝町、仁淀川町、奈良県宇陀郡御杖村、吉野郡東吉野村、山口県熊毛郡上関町、和歌山県東牟婁郡古座川町、山口県大島郡周防大島町、長野県大鹿村、福島県大沼郡三島町、青森県東津軽郡今別町、長野県下水内郡栄村が該当する。なお、北山村は該当しなくなった。財政再建団体となった北海道夕張市は、2006年(平成18年)時点で65歳以上比率が41%と市では最も高齢者比率が高く、2015年国勢調査では48.6%であった。2017年5月末、夕張市は65歳以上人口の比率が50%を越え、日本の市としては初の限界自治体となった。 2020年の国勢調査では、限界自治体の数は60市町村である。市で該当するのは、北海道歌志内市、夕張市、石川県珠洲市、高知県室戸市、土佐清水市の5市である。他に55町村(具体的には、北海道上砂川町、神恵内村、松前町。青森県今別町、外ヶ浜町、深浦町。岩手県西和賀町。秋田県上小阿仁村。福島県金山町、昭和村、三島町、飯舘村。群馬県南牧村、下仁田町、神流町。千葉県御宿町。東京都檜原村、奥多摩町。石川県能登町。長野県天龍村、根羽村、栄村。静岡県西伊豆町。愛知県豊根村、設楽町、東栄町。三重県南伊勢町、大紀町。京都府笠置町。奈良県川上村、東吉野村、黒滝村、吉野町、上北山村、天川村、野迫川村、御杖村、曽爾村。和歌山県古座川町。鳥取県日南町、日野町。広島県安芸太田町。山口県上関町、周防大島町。徳島県上勝町、神山町、牟岐町、那賀町。高知県仁淀川町、大豊町、東洋町。長崎県小値賀町。熊本県山都町。大分県姫島村。宮崎県美郷町)。なお、北山村の他、大鹿村も該当しなくなった。
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