措置入院制度の見直し議論と法改正の断念
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「相模原障害者施設殺傷事件」の記事における「措置入院制度の見直し議論と法改正の断念」の解説
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による措置入院のあり方について、解除の判断や解除後の支援体制、警察・関係団体との連携などが十分でなかったとの指摘が出ていることから、日本国政府は再発防止に向けて措置入院の制度や運用が適切であったか再検証し、必要な対策を検討することを厚生労働大臣塩崎恭久が指示した。 精神保健指定医資格の不正取得事件が複数発覚しているが、その中の1人は犯人植松の措置入院に関わっていることが判明し、医道審議会で指定医取り消し処分を受けた。 2016年9月14日に公表された厚生労働省の中間報告 において、植松を措置入院させた北里大学東病院と相模原市が、本来は退院後に必要なケアや復帰プログラムなどを検討しないまま、退院させていたことが明らかとなった。また、措置入院させた北里大学東病院内には、薬物使用に詳しい専門の医師がおらず、外部に意見を求めることもなかったため、以後の薬物依存を防ぐ手立てが何ひとつなされていなかったことも指摘された。さらに、ほかの精神障害の可能性や心理状態の変化、生活環境の調査や心理検査が行われなかったことも問題とされた。措置入院解除のときに必要な届け出に2点の不備があり、また病院と植松の両親との間で理解に食い違いがあり「同居を前提とした」措置入院解除であったにもかかわらず、植松は実際には一人暮らしとなった。届書に空白欄があったにもかかわらず、相模原市がその空白欄を追及しなかったため、精神保健福祉法で定められている「精神障害者の支援」の対象とならなかった点について、報告書は「相模原市の対応は不十分であった」と結論づけた。 2016年12月8日、厚生労働省の有識者検討会は最終報告書を発表し、措置入院後に「退院後支援計画」を義務づけることを表明した。 2017年2月14日、障害者団体が保安処分や「患者の監視強化につながる」として反対するなか、厚生労働省が相模原障害者施設殺傷事件を受け「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律改正案」を第193回国会に提出した。参議院厚生労働委員会で審議されるも、改正の要旨に掲げた『相模原市の障害者支援施設の事件では、犯罪予告通り実施され、多くの被害者を出す惨事となった。二度と同様の事件が発生しないよう以下のポイントを留意して法整備を行う』など数か所を、2017年(平成29年)4月13日の参議院厚生労働委員会で削除する異例の事態が発生。措置入院退院後に警察も関与する「退院後支援計画」などをめぐって議論が紛糾、参議院で改正案が成立するも、衆議院で審議入りもされないまま会期内に成立せず、継続審議ののち、9月28日に第194回国会の冒頭で、衆議院解散により廃案となった。 2018年(平成30年)、第196回国会で第193回国会で廃案となった精神保健福祉法改正案の国会提出を、3月9日に断念することを固めた。障害者団体や野党の反対が根強く、働き方改革関連法案の審議にも影響しかねず、後任の加藤勝信厚生労働大臣も慎重姿勢のままであり、次回以降も同じ内容の法案を厚生労働省は提出しない考え。 2019年(平成31年)の第198回国会で、廃案になった精神保健福祉法改正案の提出を、第25回参議院議員通常選挙の実施により、国会の会期延長が難しい日程を理由に、1月21日に改正案の提出を断念することが、共同通信社の取材で分かった。
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