戦後の『思想』
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終戦を挟んだ時期にも、『思想』は継続して刊行が続けられており、この時期には西田幾多郎の逝去を踏まえた「西田先生追悼号」(昭和20年10月号)なども刊行されている。その後、昭和21年3・4月合併号から1年弱のブランクを経て、翌昭和22年1月号から本格的な刊行が再開される。この昭和22年1月号の目次は次のようなものであった。 宇野弘蔵 所謂経済外強制について 清水幾太郎 環境に関する試論 竹内良知 イギリス経験論と市民社会 宮城音弥 危機と適応 小宮義孝 中国の科学 都留重人 理論経済学の方法論的反省 玉木英彦 ソヴェート同盟科学アカデミーの五ケ年計画について 一見してわかるように、社会学、社会心理学、経済学などの社会科学系の執筆者が多くなっているのが特徴である。同年には、青山秀夫、向坂逸郎、南博、福武直などの論文が掲載されている(ただし、この時期一定の影響力を持ったとされることのある、丸山真男「超国家主義の論理と心理」は同社『世界』収録の論文である)。 この後この傾向は継続し、1960年代、1970年代にかけて、大塚久雄、川島武宜、日高六郎、松下圭一、坂本義和など戦後日本で活躍した社会科学系の学者の論文が掲載されている。また、隣接領域の歴史学の論文(石母田正、家永三郎などの所論文)の掲載も見られる。 その後もこれらの領域の所論文の掲載は継続されていくが、川崎修は1970年代後半から、哲学など人文学を中心とした領域に執筆ジャンルが変遷していったことを指摘している。川崎は、これがアカデミズムにおける専門化を反映していると指摘する。また、この時期は青土社の雑誌『現代思想』などを中心に、フランスのポスト構造主義などに代表される領域の議論が活発になっており、本誌にも1980年代以降こういった領域の議論の影響が見られる。 その後は、2007年8月号で1000号に到達し、これを記念しての座談会「思想の100年をたどる」の連載なども行われつつ、現在に至るまで刊行が続いている。
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