悲願のチャンピオン獲得もウィリアムズ放出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 07:56 UTC 版)
「デイモン・ヒル」の記事における「悲願のチャンピオン獲得もウィリアムズ放出」の解説
1996年はマクラーレンに移籍したクルサードの後釜として、前年のCARTチャンピオンで「驚異の新人」と言われたジャック・ヴィルヌーヴが加入した。FW18が他チームを圧倒する戦闘力だった事もあり、奇しくも「2世ドライバー」同士にしてチームメイト同士のチャンピオン争いと言う展開となった。ヒルは開幕戦オーストラリアGPからの3連勝など前半9戦中6勝を挙げたが、後半戦はやや精彩を欠いてヴィルヌーヴの猛追を受け、タイトル争いは最終戦の日本GPまでもつれ込んだ。 しかし、この時点でヒルとヴィルヌーブとの得点差は9点、ヒル7勝に対してヴィルヌーヴ4勝であり、日本GPでヴィルヌーブが優勝してもヒルは6位1ポイント以上を獲得すると、勝利数の差により無条件でチャンピオン決定と言う非常に有利な状況にあった。ヒルは予選2番手ながらスタート時にポールポジションのヴィルヌーヴをかわして先頭に立って一気に優位に立ち、ヴィルヌーヴがタイヤ脱落トラブルでリタイアした瞬間に自身初のワールドチャンピオンが決定し、その後は一度も先頭を譲らず完勝した。「イギリスで勝ったことより96年最終戦の鈴鹿での勝利が一番嬉しかった」と喜びを語っている。F1史上初となる親子2代でワールドチャンピオンとなった。なおヒルはこの年の全レースでフロントローを獲得しており、ヴィルヌーヴとは安定感で決定的な差を付けた。 しかし、この年のイタリアGP直前の8月26日にヒルはチームから翌年の契約を行わないことを通告され、その後、ヒルの後任としてドイツ人のハインツ=ハラルド・フレンツェンが起用されることが発表された。このヒルの解雇劇についてあまり語られておらず、本人も当時はこの件について語りたくないと沈黙し、後年のインタビューでいくつか語ったものの、詳細は不明である。これに関して書かれた当時の記事の内容では、契約金の交渉が行われていないことからウィリアムズはヒルの放出を内定している可能性があり、ヒルが大きく譲歩しないと残留は難しい考えられており、当時のストーブリーグの噂でもヒルが1997年もウィリアムズ残留できるか怪しいという見解が占めていた。また、ウィリアムズから見れば、1994年と1995年はヒルがドライバーズタイトル獲得の可能性があったにもかかわらず、ミハエル・シューマッハに敗れる結果になったことから今年度で見切りをつけることにしたという見方もあった。他にもフレンツェンの起用に関しては、フジテレビの1996年のF1総集編にて将来のエンジン獲得に有利なドライバーとしてフレンツェンを起用するというコメントがナレーションで語られたことや1994年にセナがチームに対しを1995年のドライバーとしてフレンツェンの起用を提案していたという噂があり、チームはそれをここにきて実現することを選んだという考察を挙げている(1996年時点では一連のウィリアムズの動きからBMWが将来的に参戦するのではという噂話にとどまっており、BMWが2000年からウィリアムズにエンジン供給を行うことが発表されたのは1997年9月になってからである)。また、ヒルの後年のインタビューによれば、1997年の契約がないことについてチームから詳細な説明はなかったと語り、ヒル自身は契約金に関しては弁護士に任せていたため、契約金に関する問題に関しては自身の関わっていなかったとコメント。むしろ、この年(1996年)の好成績は(ヒルを放出する予定であった)ウィリアムズ側にとっては予想外で行き詰まってしまったのだろうと語っている。 このヒル解雇劇はチーフデザイナーを務めていたエイドリアン・ニューウェイの逆鱗に触れ(チームからは事前の相談も無かった)、チーム株買収に対するチームとの意見の不一致も加わり、ニューウェイはマクラーレンへ移籍を決断。来期のFW19の設計を終えたあと、シーズン終了後の11月8日、ニューウェイは「ウィリアムズは契約不履行している」と主張して出社拒否し、これに対してウィリアムズ側とは法廷闘争にまで発展した。また、長年ウィリアムズの広報を担当していたアン・ブラッドショーほかヒルを慕っていた数人のスタッフも離脱した。なおこの一件に関しては後年フランク・ウィリアムズ自身が「あれは大きな失敗だったな」と認め、この年を境にウィリアムズの勢いは次第に下降傾向に入ったと評されている。 日本GP直後、ウィリアムズを離脱したヒルは翌年F1参戦となるブリヂストンのタイヤテストに参加した。
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