宇宙論への影響
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「HE 1523-0901」の記事における「宇宙論への影響」の解説
HE 1523-0901は、金属量が[Fe/H] = -2.95と、極端に金属に欠乏した低金属星である。しかし、少量ながらも恒星に金属があるという事は重要である。宇宙誕生時のビッグバンにおける元素合成では、水素からヘリウムと、極微量のリチウムおよびベリリウムしか合成されず、これ以上重い元素の合成には、恒星内元素合成と呼ばれる恒星内部における核融合反応で生成されるが、それでも合成できる最も重い元素は鉄やニッケルである。HE 1523-0901に含まれるウランやトリウムのような極端に重い元素の合成には、r過程と呼ばれる超新星爆発の周辺部で行われる急激な中性子捕獲によって誕生する。すなわち、HE 1523-0901に含まれる重元素の存在を説明するには、HE 1523-0901が誕生した分子雲が、既に寿命を迎えたもっと古く重い恒星の超新星爆発によってばら撒かれた物である事を示している。このことは、宇宙の誕生からどれくらいの時間で大質量の恒星が誕生したのかを論ずる上で影響を与える。 HE 1523-0901は、自身が何らかの恒星の残骸から誕生していることから、現在生き残っていて、観測されている中では最古であるが、宇宙最初の恒星ではない。最も古い恒星である場合は、金属を全く含まない、水素とヘリウムのみで構成された恒星のはずである。それらは太陽の数十倍から数百倍の質量を持ち、わずか数百万年で寿命を迎えたと推定されるため、観測は困難であると考えられる。逆に、HE 1523-0901は太陽の0.8倍という軽い恒星のため、132億年経った現在でも寿命を迎えていないと考えられる。初期の宇宙は今より大きさが小さく、物質の密度も豊富なため、大質量星が形成されやすい環境にあるが、HE 1523-0901のような軽い恒星は、どのように形成されるのかは謎である。 また、HIP 11952という、年齢が128億歳と推定されている低金属星([Fe/H] = -1.9)には、木星型惑星と推定される太陽系外惑星が2つ存在する。惑星が存在することは、HE 1523-0901と共に、宇宙の元素合成の経過に対して影響を与える。
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宇宙論への影響
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「コペルニクスの原理」の記事における「宇宙論への影響」の解説
宇宙論においては、コペルニクスの原理を仮定すると、地球から宇宙のどの方向を観測しても同じようにみえる場合、宇宙はどの地点であっても一様かつ等方的である、とする宇宙原理が導かれる。 現実には、宇宙では超銀河団や銀河フィラメント、超空洞といった等方的でも一様でもない構造が観測される。しかし、それよりもずっと大きい規模、およそ6-7億光年以上の単位でみた場合には、より等方的になり、どこまでも大きい集団は存在しない。宇宙の地平線規模でみた際に、若い恒星の数、銀河団の数などといった、地球からの距離に応じた系統的な変化も存在するが、これは「地球が宇宙の中心にあって宇宙の中心部と辺境で性質が異なる」ことを意味しない。コペルニクスの原理に基づく解釈では、この系統的な変化は宇宙の進化によるものである。遠方からの光は、それだけ長い時間をかけて観測者へと届くため、遠くの天体ほど宇宙初期に近い時代の姿を観測することになる。宇宙の地平線近くからの光は、観測されるまでに宇宙年齢に匹敵する時間がかかっており、宇宙初期の姿を示していると考えられる。観測できる最も遠方からの電磁波、つまり宇宙マイクロ波背景放射(CMB)はきわめて等方的である。 現代宇宙論は、宇宙原理が宇宙の地平線規模において完全でないにしろほぼ正しいことを、前提としている。コペルニクスの原理は、観測結果に照らし合わせて宇宙原理の妥当性を担保する、必要最小限の仮定である。 ボンディとトーマス・ゴールドは、コペルニクスの原理を時間にも適用し、宇宙は場所だけでなく時間に関しても等質性を保持するという、定常宇宙論に基づく「完全宇宙原理」を提唱した。しかし、この考えは前述した宇宙の進化と矛盾するもので、ビッグバンとは全く異なる状態から宇宙が誕生・膨張し、将来もダークエネルギーの影響による加速膨張が予測する未来とは全く異なる状態へ進むことになる。現在では、CMBを始めとする観測的証拠により、ビッグバン理論が標準的な宇宙論とされ、定常宇宙論は衰退している。
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