宇宙論における示唆
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/18 05:34 UTC 版)
前節で触れた科学的成果に加えて、数多くの宇宙論に関する疑問が COBE の観測結果によっても答を与えられないまま残されている。 銀河系外背景光 (extragalactic background light, EBL) を直接測定すると、宇宙全体での星形成、重元素や塵の生成、恒星の光が塵に吸収されて赤外線の放射に変換する過程などの歴史に重要な制限をつけることができる。COBE のデータからこの EBL の強度が測定された。 DIRBE と FIRAS で得られた 140 - 5000µm の結果から、EBL の全強度は約 16 nW/(m2·sr) であることが分かった。この値は元素合成によって放出されたエネルギー量と矛盾せず、宇宙の歴史全体を通じて He と重元素の形成によって放出された全エネルギーの約 20-50% を担っている。このことから、背景光の光源として核反応のみを考えると、ビッグバン元素合成の解析から示唆されるバリオンの質量密度のうち少なくとも 5-15% が恒星内部で He やより重い元素に変わっていることが示唆される。 また星形成についても重要な推測が得られる。COBE の観測は宇宙における星形成率に重要な制限を与え、様々な星形成史での EBL のスペクトルを計算する助けとなっている。COBE での観測から、赤方偏移が z ≈ 1.5 付近での星形成率が、紫外線や可視光での観測から推測されていた値よりも2倍ほど大きいことが分かっている。この超過分のエネルギーは主に、塵で覆い隠されていまだに見つかっていない銀河に含まれる大質量星か、観測されている銀河にある非常に塵の多い星形成領域から生み出されていると考えられる。正確な星形成史は COBE によっても明確に解決されてはおらず、将来の観測が必要とされている。
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