大井川の流量減少を巡って(-2017年)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 16:06 UTC 版)
「中央新幹線」の記事における「大井川の流量減少を巡って(-2017年)」の解説
大井川については中央新幹線計画が本格化する以前より、中下流域の奥泉ダム、大井川ダムおよび塩郷ダムからの取水が主な原因で、下流域で渇水の傾向が見られた。 詳細は「大井川#大井川・再生への苦難」を参照 特に塩郷ダムから下流は、分岐する導水路から川口発電所が最大毎秒90トンにも及ぶ発電用水を利用し、大井川に戻らずにそのまま大井川用水として最大毎秒43トン利用されていることもあり、大井川の流量減少が問題となっていた。 2013年9月にJR東海が示した環境影響評価準備書では、上流域にあたる二軒小屋から木賊までの9地点において、河川および井戸の流量が最大毎秒2トン減少するという予測が発表された。これに対し、静岡県は翌2014年3月、川勝平太静岡県知事による知事意見として「大井川の流量を減少させないための環境保全措置を講ずること」などを要望し、「本県境界内に発生した湧水は、工事中及び供用後において、水質及び水温等に問題が無いことを確認した上で、全て現位置付近へ戻すこと」とした。 JR東海は同2014年8月に環境影響評価書を公表し、流量減少予測の前提として「地下水が岩盤の隙間からトンネル内に湧水として排出される」とした上で、環境保全措置としてNATM工法の採用を挙げ、「覆工コンクリートと地山の間に空隙が出来ないため、トンネル内への地下水の湧出が少ないと考えられる」「河川流量の減少量を少なくできると考えている」とした。また、流量減少に伴う代替水源の確保として、先進導坑掘削中は非常口までポンプアップして大井川に戻し、貫通後および工事完了後は流量減少量や河川への影響に応じて戻すとした。 その後、JR東海が大井川水資源検討委員会を設置し、有識者らと共に検討した結果、2015年(平成27年)11月に導水路トンネルの計画を公表した。西俣非常口から椹島で大井川に合流する地点まで約12 kmのトンネルを大井川右岸に建設し、自然流下で毎秒1.33トンの流量が戻るとした。残りの毎秒0.7トンについても、先進導坑から導水路トンネルまで必要に応じてポンプアップすることで減少を回避することができるとした。2017年1月には環境アセスメントの事後調査報告書が公表され、導水路トンネル等に関して大井川水資源検討委員会で提示されたものと同様の内容が盛り込まれた。これに対し、静岡県 環境影響評価審査会は県知事への答申案をまとめ、ポンプアップについて「『常に』でなくては困る」として、ポンプ施設の維持管理や恒久的な稼働についても明記した協定を締結するよう求めた。これを受けて、静岡県は2017年4月3日に知事意見を発表し、「導水路トンネルにより流量が回復するのは導水路トンネル出口から下流域であり、出口から上流域については別途の流量回復措置が必要となる」として、西俣非常口及び千石非常口へのポンプアップを求めた。これに加えて、水資源の減少に伴う水利用への影響回避に向けて、大井川の下流利水者11者とJR東海が、流量減少対策に関する基本的な事項を共有するための基本協定を同月末までに締結することを求めた。この基本協定に関して、JR東海は同月28日に静岡県に宛てた回答書のなかで、「大井川下流域の水利用の保全に関する書面を取り交わすことについて、静岡県を窓口として打合せをしております」と記載している。報道によれば、静岡県が取りまとめ役となって基本合意の文書案作りを進めており、2017年10月までの時点で合意案がほぼまとまり最終段階に入っていたとされている。
※この「大井川の流量減少を巡って(-2017年)」の解説は、「中央新幹線」の解説の一部です。
「大井川の流量減少を巡って(-2017年)」を含む「中央新幹線」の記事については、「中央新幹線」の概要を参照ください。
- 大井川の流量減少を巡ってのページへのリンク