地球上の人類が観測可能な範囲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 12:10 UTC 版)
「宇宙」の記事における「地球上の人類が観測可能な範囲」の解説
詳細は「観測可能な宇宙」、「観測」、「光速」、「視野」、および「主観」を参照 上で説明したように、本当の宇宙全体の大きさは全然分かっていないが、現時点での観測可能な限界ライン(宇宙の地平線)の算出というのは、全然別の簡単な問題であり、簡単に算出できる。地球から理論上観測可能な領域(観測可能な宇宙)は、半径約450億光年の球状の範囲である。ただしこの大きさは赤方偏移から計算された理論上の値であり、直接の観測によって正確に分かっているわけではない。 なお現代の自然科学では宇宙に特別な中心があるとは考えられておらず、宇宙全体について考察するとき、人類や地球を特別扱いして中心として扱うなどという考え方はそもそも根本的に間違っている、もってのほかだ、と考えられている、ということは強調しておかなければならない。 「天体から放たれた光が地球にたどり着くまでの時間に光速をかけたもの」は光路距離(英語版)(あるいは光行距離)と呼ばれている。これは光が地球に届くまでの間に、光の旅した道のりを表す。光路距離では、電磁波により観測される宇宙の果てから地球までの光の旅した道のりは約138億光年と推定されている。これは光速に宇宙の年齢をかけたものだが、この値は先に述べた2つの距離(450億光年、4100万光年)と値が異なっている。光が地球に届く間に宇宙が膨張し、そのため光の道のりが延び、また光を放った空間が遠ざかるからである。つまり、光路距離はある時刻における空間上の2点間の距離を指し示すものではない。天文学では光路距離を天体までの距離とみなすことが多いが、それは我々に届く光が旅した道のりであり、現在の天体までの距離や、天体が光を放ったときの天体までの距離を示すものではない。 現在(21世紀初頭)の地球上の人類が観測することができる最も古い時代に放たれた光は、約138億年前に約4100万光年離れた空間から放たれた光だ、などと、最近数十年は考えられており、「その光源がある空間は、現在450億光年の彼方にあり、光は138億年かけて138億光年の道のりを旅してきた。わずか4100万光年の距離を光が進むのに138億年もの時間を費やしたのは宇宙の膨張が地球への接近を阻んだためだ」などと、ここ数十年の物理学者・天文学者などによって考えられている。(なおこれを分かりやすく喩えると、流れの速い川を上流へ向かう船がなかなか前に進めないという状況に似ている。「宇宙空間の膨張」という仮定はそもそも一般相対性理論を原理に据えて導き出しているわけだが、電磁波の媒質である空間の膨張により地球を基点としたときの、地球から離れた場所にある光の速度が変化しても特殊相対性理論における「光速度不変の法則」とは矛盾しない)。 《地球上から見ることができる宇宙の大きさ》とは、人間が物理的に観測可能な宇宙の時空の最大範囲を指す表現である。宇宙は膨張し続けているため、宇宙の大きさをと言うと、観測できる光のなかでも、最も古い時代に光が放たれた空間のことを指している。この空間から光が放たれたとき、つまり約138億年前(宇宙の晴れ上がり直後)、この空間(観測可能な宇宙の果て)は地球がある位置から(地球を中心とする全方向に宇宙論的固有距離において)約4100万光年離れたところにあった。そしてこの空間は、地球の位置から、光の約60倍の速度で遠ざかっていた、とされる。この空間までの現在の距離である共動距離(英語版)は、約450億光年と推定されている。 なお典型的な銀河の直径でも3万光年であり、隣どうしの銀河の間の典型的な距離は300万光年にすぎない。例えば、我々人類が属している天の川銀河はざっと10万光年の直径であり、我々の銀河に最も近い銀河のアンドロメダ銀河はおよそ250万光年離れている。観測可能な宇宙の範囲内だけでもおそらく1000億個(1011個)の銀河が存在している。 人類の宇宙観は、ここ百年ほどの間で大きく進展してきた。学問的には、静的な宇宙観から動的な宇宙観へと移行し、科学技術的には、人類は有人宇宙飛行を実現し、地球以外の天体である月に降り立ち、国際宇宙ステーションも建造した。宇宙に関するSFや映画などの創作物も啓蒙的な意義を持っていた。 中でも物理学上の時空間に関する観念の変革は、大きな意味を持っている。学問上の大きな起点となったばかりではなく、我々の生活上の常識からの類推が、宇宙の本質を考察するためには全く不適合であることを示した意味合いも持っている。
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