国民投票をするにいたった背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 04:26 UTC 版)
「イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票」の記事における「国民投票をするにいたった背景」の解説
コロンビア大学教授であるジェフリー・サックスは、英国のEU離脱への動きはこれまでのグローバリゼーションへのアプローチに深い問題があったからだと指摘した。 欧州のほぼ全ての国でポピュリスト・反移民政党が躍進し、そして大西洋をはさんでのドナルド・トランプ。これらの動きには違いはあれど共通点がある。これらの動きの支持者は白人、老人、教育水準が低い、労働者階級であるという傾向がある。彼らは「移民は制限不可で、文化を不安定化させ、(自分たちの)経済的利益を害する」と考えている。彼らは「政治金融エリートが徒党を組んでグローバリゼーションをねじ曲げ、権力を濫用し脱税している」と考えている。このような考え方はレイシズムでもなければファシズムでもない。米国と欧州は過去50年にわたって多量の合法・非合法移民を受け入れてきた。米国への移民はメキシコや西インド諸島から、欧州への移民は中東・サブサハラ・西アジアから来ている。1970年には米国の人口に占める外国生まれの割合は約5%だったが、2015年には約14%にまで上昇した。同様のことは英国でも言える。1971年には約6%であり、2015年には約13%にまで上昇している。それに伴って所得格差も進行した。 サックスは、その部分的原因は米国にある、としている。米国の軍事政策が移民を増加させた。ラテンアメリカでの米国の麻薬戦争は大きな暴力を生み、難民を米国に流入させた。1980年代の中米でのコントラは米国の隣国を不安定化させる要因となった。米国は中米・カリブ海での小規模武器の提供者であり、組織犯罪のハブであり、米国大企業の利益のために民主的な政府を不安定化させたりしていたが、米国の政治エリート層はこれらがもたらす結果を気にしていない。(なおサックスは、米国は隣国メキシコなどがなぜ貧しく治安が悪い国家なのかを考える必要があり、米国の政策がそれらにどう関与したのか今一度考えるべきだ、とも指摘。)欧州への難民流入に関しても、近年のアフガニスタン戦争、イラク戦争、2011年リビア内戦、CIAによるイエメン介入、CIAによるソマリアへ介入(英語版)などこれら全てと関係がある。 移民は治安・仕事・社会保障を求めて大挙して押し寄せてくる可能性がある。豊かな国は国境管理能力を実質的に失っている、もしくは公衆がそう感じている。だが経済エリート層はこれに関心を示さない。企業は低賃金の移民を使って収益を上げ、裕福な家計は移民が供給する安価なサービスに満足する。労働者階級は賃金低下、雇用のオフショア、機械化の波に飲み込まれているが、エリート層は見て見ぬふりをしている(ジェフリー・サックスは経済的に豊かな国は出入国管理が必要だと説いた。)。
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