名古屋拘置所職員による情報漏洩事件に関連した訴訟
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「大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件」の記事における「名古屋拘置所職員による情報漏洩事件に関連した訴訟」の解説
法務事務官副看守長として名古屋拘置所の処遇部・処遇部門に勤務していた同所職員(以下「副看守長」)は2008年(平成20年)8月16日 - 2009年(平成21年)11月21日ごろまでの間、前後27回にわたり名古屋拘置所内で被告人KMに対し、他の被収容者の信書発受相手の氏名などの情報を記載したメモを交付し、職務上知り得た秘密を漏らした。また法務事務官看守として名古屋拘置所処遇部処遇部門に勤務していた同所職員(以下「看守」)も2009年7月28日 - 2010年(平成22年)2月17日ごろまでの間、前後7回にわたり拘置所内で被告人KMに対し、他の被収容者の信書発受相手の氏名などの情報を同様に漏洩した。一方で被告人KMは上告中(2008年8月ごろ - 2010年9月)に副看守長・看守に加えて主任矯正処遇官に対し、他の収容者の氏名や彼らの外部交流者・差し入れ人に関する個人情報(住所・氏名など)を複数回にわたり自身に提供することを唆し、職務上知り得た秘密を漏らすよう唆した。このことで嫌疑を掛けられたKMは2010年12月27日、同拘置所所内で司法警察員の資格(刑事施設収容法290条2項による規定)を有する同所職員から国家公務員法違反(名古屋拘置所職員の守秘義務違反)事件の被疑者として事情聴取されそうになったが、これを拒否した。結局、名古屋地検の検察官が2011年4月21日付で名古屋拘置所に収容されている人物からの「被疑者KMが情報漏洩を唆した」とする告訴状を受理して認知立件したが、名古屋地検は2011年8月19日付でKMを不起訴処分とした。 この事件で被疑者として捜査を受けたKMは2011年4月 - 8月に弁護士2人と計8回にわたり接見を申し込んだが、拘置所側は接見を認めなかったり、職員を立ち会わせたりなどした。このため原告・死刑囚KMは「刑事訴訟法で認められた接見交通権などを侵害された」として、弁護士2人とともに国に計776万円の損害賠償を求めた民事訴訟を起こした。2014年(平成26年)8月28日に名古屋地裁民事第9部(福井章代裁判長)は「KMは名古屋地検の検察官から事情聴取を受けるなどしており、不起訴処分にされるまでは事件の被疑者として扱われていた。接見交通権を侵害されて精神的苦痛を受けたのは明らかだ」と認定し、国に対し原告へ63万円を支払うことを命じる判決を言い渡した。 一方で死刑囚HMは「上告中の2008年8月 - 2010年2月にかけ、自身の手紙や面会日・面会相手、差し入れの内容などに関する情報を名古屋拘置所の職員(副看守長・看守の2人)により、計26回にわたって本事件共犯者の死刑囚に漏らされたほか、副看守長が漏洩の際のメモに自身を指して『バカの発信』などと記載した」として、国に損害賠償160万円の支払いを求め国賠訴訟を起こした。名古屋地裁(堀内照美裁判長 / 判決は朝日貴浩裁判長が代読)は2014年4月18日に「原告(死刑囚HM)は事件で共犯者と主従関係を争っており、特に情報提供を望まないことは容易に推測できる。職員の行為は精神的苦痛を与えるものであると言わざるを得ない」と認定して原告・死刑囚HMの訴えを一部認め、国に「精神的苦痛への慰謝料」として10万円の支払いを命じる判決を言い渡した。加えて死刑囚HMは「名古屋拘置所の職員2人が2007年(平成19年) - 2009年の計21回にわたり、自身の手紙や面会日・面会相手、差し入れの内容のほか、事件の鑑定・提訴に関する会話の内容を共犯者の死刑囚に漏らした」として国に180万円の損害賠償を求める国賠訴訟を起こし、名古屋地裁(加島滋人裁判長)は2016年9月2日に「情報漏洩はプライバシー権・通信の秘密や死刑囚の防御権を侵害しており違法だ」と指摘して国に慰謝料39万円の支払いを命じる判決を言い渡した。 またこれとは別に、死刑囚HMは「2008年8月 - 9月にかけ、名古屋拘置所職員が当時上告中だった自身の旧姓・名前や起こした事件の内容などの個人情報を別の収容者に漏らした」として賠償金60万円を求め国賠訴訟を起こした。国側は第一審(名古屋地裁)から職員による情報漏洩を否定し、名古屋地裁(片田信宏裁判長)は2014年3月7日に原告HM側の請求を棄却する判決を言い渡した。しかし原告が控訴したところ、名古屋高裁民事第1部(木下秀樹裁判長)は2015年2月5日に原判決を変更し、被告・国側に対し30万円の支払いを命じる(原告HMの逆転勝訴)判決を言い渡した。
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