合意の原則と就業規則とは? わかりやすく解説

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合意の原則と就業規則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/07 02:37 UTC 版)

労働契約法」の記事における「合意の原則と就業規則」の解説

日本においては個別締結される労働契約では詳細な労働条件定められず、就業規則によって統一的に労働条件設定することが広く行われている。また、労働契約関係は、一定程度長期にわたる継続的な契約関係であるのが通常であり、社会経済情勢変化始めとする契約当事者取り巻事情変化に応じて当初取り決めた労働契約内容統一的に変更する必要が生じ場合があることから、就業規則変更により労働契約内容である労働条件変更することが広く行われてきたところである。 この就業規則法的性質については、判例秋北バス事件最判昭和43年12月25日民集22巻13号3459頁)において、判例法理として確立しているものであるが(就業規則#法的性質参照)、就業規則労働契約における権利義務関係を確定させる法的効果認め法的根拠成文法上は存在せずどのような場合就業規則による労働条件変更有効に認められるのかについての予測可能性は必ずしも高くない状況にあった。そこで労働契約就業規則の関係について、 労働契約の成立に際しては「労働者及び使用者労働契約締結する場合において、使用者合理的な労働条件定められている就業規則労働者周知させていた場合には、労働契約内容は、その就業規則定め労働条件よるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者就業規則内容異な労働条件合意していた部分については、第12条該当する場合除きこの限りでない」(第7条)とし、周知させた就業規則は、原則として個別労働契約優先する第7条は、労働契約において労働条件詳細に定めず労働者就職した場合において、「合理的な労働条件定められている就業規則」であること及び「就業規則労働者周知させていた」こととい要件満たしている場合には、就業規則定め労働条件労働契約内容補充し、「労働契約内容は、その就業規則定め労働条件による」という法的効果生じることを規定したのである。これは、労働契約の成立についての合意はあるものの、労働条件詳細に定めてない場合であっても就業規則定め労働条件によって労働契約内容補充することにより、労働契約内容確定するのである第7条労働契約の成立場面について適用されるものであり、既に労働者使用者との間で労働契約締結されているが就業規則存在しない事業場において新たに就業規則制定した場合については適用されないまた、就業規則存在する事業場使用者就業規則変更行った場合については、第10条問題となる(平成24年8月10日基発0810第2号)。 第7条の「周知」は、労働基準法106条及び労働基準法施行規則52条の2により法定された方法限定されるものではなく実質的に判断されるのである。「労働者周知させていた」は、その事業場の労働者及び新たに労働契約締結する労働者に対してあらかじめ周知させていなければならないものであり、新たに労働契約締結する労働者については、労働契約締結同時である場合含まれるのである平成24年8月10日基発0810第2号)。 労働契約変更に際しては「使用者は、労働者合意することなく就業規則変更することにより、労働者不利益に労働契約内容である労働条件変更することはできない」(第9条)とするが、「使用者就業規則変更により労働条件変更する場合において、変更後就業規則労働者周知させ、かつ、就業規則変更が、「労働者の受ける不利益程度」「労働条件変更必要性」「変更後就業規則内容の相当性」「労働組合等との交渉の状況その他の就業規則変更係る事情照らして合理的なのであるときは、労働契約内容である労働条件は、当該変更後就業規則定めところによるものとする」(第10条)とする。つまり、就業規則定められている労働条件労働者不利益に改定する場合であっても、その合意に際して就業規則変更が必要とされることを除き異なるものではない。ここでいう変更」には、就業規則中に現に存在する条項改廃することのほか条項新設することも含まれる。「労働者の受ける不利益程度労働条件変更必要性変更後就業規則内容の相当性、労働組合等との交渉の状況」は、就業規則変更合理的なのであるか否か判断する当たって考慮要素として例示したものであり、個別具体的な事案に応じて、これらの考慮要素該当する事実含め就業規則変更係る諸事情総合的に考慮され合理性判断が行われることとなる。合理性判断考慮要素としては、従来の判例法理第四銀行事件最判平成9年2月28日)を踏襲している(平成24年8月10日基発0810第2号)。就業規則変更が「合理的」なものであるという評価基礎付ける事実についての主張立証責任は、従来どおり、使用者側が負う。 「労働組合等」には、労働者過半数組織する労働組合その他の多数労働組合事業場過半数代表する労働者のほか、少数労働組合や、労働者構成されその意思代表する親睦団体等労働者意思代表するものが広く含まれる平成24年8月10日基発0810第2号)。 使用者提示した労働条件変更賃金退職金に関するのである場合には、当該変更受け入れる旨の労働者行為があるとしても、労働者使用者使用されてその指揮命令服すべき立場置かれており、自らの意思決定基礎となる情報収集する能力にも限界があることに照らせば、当該行為をもって直ち労働者同意があったものとみるのは相当でなく、当該変更対す労働者同意有無についての判断慎重にされるべきである。そうすると就業規則定められ賃金退職金に関する労働条件変更対す労働者同意有無については、当該変更受け入れる旨の労働者行為有無だけでなく、当該変更により労働者もたらされる不利益内容及び程度労働者により当該行為がされる至った経緯及びその態様当該行為先立つ労働者への情報提供又は説明内容等照らして当該行為労働者自由な意思基づいてされたものと認めるに足り合理的な理由客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である(山梨県民信用組合事件最判平成28年2月19日)。 ただし、労働契約において、労働者及び使用者就業規則変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条該当する場合除き、その部分従前労働条件よるものとされる第10条但書)。その部分については、改め労働者合意しない限り就業規則変更によって労働者不利益に変更することはできない就業規則定め基準達しない労働契約については、その部分無効となり、その無効となった部分就業規則定め基準による(第12条)。

※この「合意の原則と就業規則」の解説は、「労働契約法」の解説の一部です。
「合意の原則と就業規則」を含む「労働契約法」の記事については、「労働契約法」の概要を参照ください。

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