南硫黄島の地形と形成史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/08 03:09 UTC 版)
「南硫黄島原生自然環境保全地域」の記事における「南硫黄島の地形と形成史」の解説
南硫黄島は、ほぼ南北方向に延びる、全長約1,200キロ、幅約400キロの島弧である伊豆小笠原弧の最南部に位置している。伊豆諸島や火山列島を構成する島々は、伊豆小笠原弧の火山フロントである七島-硫黄島海嶺に属し、258万8000年前以降の第四紀に活動している火山であるが、南硫黄島もやはり第四紀に火山活動によって形成された火山島である。南硫黄島がいつごろ島として誕生したのかについてははっきりしていないが、採集された岩石の分析から地磁気の逆転が見られないため、数十万年より新しいと考えられている。 日本列島のように、かつて大陸と地続きであったが切り離された島を大陸島と呼ぶ。一方、海洋底から火山活動によって誕生し、これまで大陸と一度も地続きとなったことがない島を海洋島ないし大洋島と呼ぶ。伊豆小笠原弧の火山フロントである七島-硫黄島海嶺に属する南硫黄島は、典型的な大洋島である。 島の面積は3.67km2で、周囲は約7.5キロであるが、伊豆諸島と小笠原諸島の中で最高峰である916メートルの山がそびえ、島の海岸線は湾や入江などの出入りがほとんど見られず、大小の岩に覆われた5メートルから50メートルの幅の浜辺があり、砂浜はほとんど見られない。そして浜辺の背後には数十メートルから200メートルの海食崖が発達している。山体は平均斜度45度に達する急斜面で、侵食が進んでおらず火山体の原型を比較的よく留めている北西部がもっとも傾斜が緩やかであるが、その部分でも斜度30度に達する。また南硫黄島の地形の特徴としては、川や湖沼などの淡水系がまったく見られないことも挙げられる。 南硫黄島を構成する岩石は玄武岩であり、体積比では溶岩流とアグルチネートが島のほとんどを占める。島の急斜面が保たれているのはこのアグルチネートによるもので、強く溶結されている。山頂部には直径約150メートル、深さ30 - 40メートルの東側に開析された火口がある。火口の東側は崩落しており、噴火の記録はなく、現在噴気活動も認められない。山体全体も東斜面が西斜面よりも侵食が進んでいる。海食崖には確認されているだけで254本の岩脈が貫入している。その大部分は放射状岩脈で斑状組織を有しており、斑晶は斜長石、単斜輝石、かんらん石を含む。大型斑晶に富む岩石が多く、斑晶鉱物は最大で直径1mm近くに達する。 島の周囲の海域ではサンゴ礁の発達は悪く、海岸線に外洋の波浪が直接打ちつけるようになっている。南硫黄島周囲は水深40 - 50メートル付近までは緩やかな傾斜であるが、それ以深では急速に深度を増す。そして南硫黄島の北東約5キロには、しばしば活発な火山活動が観測されている海底火山である福徳岡ノ場が、また北北西約20キロには北福徳碓がある。 南硫黄島の誕生は数十万年前と考えられる。まず溶岩の流出を繰り返しながら小型の火山体が成長していった。短い噴火の休止期に続いて再び溶岩の流出などの火山活動が続き、今の南硫黄島山頂よりも少し東側に火山体が成長していった。その後、現在の山頂部からの噴火が始まり、現在の南硫黄島が形成された。その後、火山活動は南硫黄島の北東約5キロの福徳岡の場に移り、活動が休止した南硫黄島では侵食活動によって現在の形となったと考えられる
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