南硫黄島のオガサワラオオコウモリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 10:14 UTC 版)
「南硫黄島原生自然環境保全地域」の記事における「南硫黄島のオガサワラオオコウモリ」の解説
オガサワラオオコウモリは父島列島、母島列島、火山列島に生息する、翼を広げると約1メートルになる大型の翼手類で、かつては父島や母島で多数のオガサワラオオコウモリが生息していたが、戦後のアメリカ統治時代に食用としてグアム島に売られたり、農作物に被害を与えるために駆除されてしまったりしたため数が激減し、天然記念物と種の保存法により国内希少野生動植物種に指定されている。現在の生息数は南硫黄島以外では父島に100 - 160頭、北硫黄島に数十頭、母島、硫黄島に少数の生息が確認されている。 南硫黄島では戦前にオガサワラオオコウモリの生息が確認されていたが、1982年の調査によって約100頭から数百頭の生息が推定され、ほかの島に生息する個体よりも全体の色彩が明るいこと、そして昼間に活動するという特徴が報告された。また南硫黄島のオガサワラオオコウモリはおもにタコノキやコブガシの果実を食用としていることが確認されたが、アナドリの頭部を食べている場面も目撃されており、状況によっては肉食も行っている可能性が指摘された。 2007年の調査時も100 - 300頭程度のオガサワラオオコウモリの生息が確認された。1982年の調査時と同じく昼間の活動が確認されたが、昼間の活動は食物探索の合間に休息をしている可能性があり、また夜間も活動していることが確認された。これまでオガサワラオオコウモリの生態について調査が行われた父島、母島、北硫黄島ではいずれも昼間の活動は確認されず、夜間の活動のみであった。南硫黄島のみ昼間にオガサワラオオコウモリの活動が行われる理由としては、猛禽類が生息しておらず昼間に活動しても捕食される恐れがないことと、慢性的な食物不足のために昼間も食物探索に当てねばならないなどの理由が考えられる。 1982年の調査時にも指摘された、ほかの生息地域の個体よりも色が明るいという特徴は2007年の調査時も確認された。2007年に捕獲された個体を観察した結果、体毛の生え際はほかの地域の個体の色と変わらないと見られるため、南硫黄島のオガサワラオオコウモリの特徴である昼間の活動や、急峻な地形のため日光を遮るものが少ないために紫外線などにより後天的に色が変化した可能性が高いとされた。 2007年の調査時、オガサワラオオコウモリはタコノキの実のほかにシマオオタニワタリとナンバンカラムシの葉を食用としていたことが確認された。これは2007年の調査直前に台風が南硫黄島付近を通過しており、その影響で著しい食物不足に陥っていた可能性があり、シマオオタニワタリとナンバンカラムシの葉は緊急的に利用していた可能性もある。また2007年の調査時に捕獲されたオガサワラオオコウモリすべてに著しい歯の磨耗が確認され、顎の噛む力も強かった。歯の著しい磨耗が台風通過直後の食糧不足に伴う一時的なものか、慢性的な食糧不足による持続的なものであるかは現在のところ不明である。
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