半導体用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 04:38 UTC 版)
フォトマスクは、製造しようとする素子の各積層ごとやビアやウェルといった加工処理ごとにその図形が必要となる。そのため、素子の構造が複雑になればそれだけフォトマスクの枚数は増加する。 材質には、ハードマスクとエマルジョンマスクがあり、ハードマスクではクロムの薄膜で、エマルジョンマスクは黒化金属銀でそれぞれ遮光膜部分を作り、両者の支持体(基板、サブストレート)はハードマスクではガラス製、エマルジョンマスクではガラス製、または高分子フィルム製である。ガラス製でのプロセスルールが180nm以下程度の高精細プロセスでは、通常のソーダライム・ガラスに代わって合成石英ガラスが使用される。これは通常のガラスでは熱膨張による位置誤差が無視できず石英ガラスは熱膨張率が20分の1以下であるためや、紫外線領域である350nmからは通常のガラスでは透過率が落ち300nmではほとんど透過しなくなるためでもある。 マスクの遮光膜パターンそのものも光学的技術によって作成される。まず高平滑に磨かれたサブストレートの片側全面にスパッタリングによってクロムの遮光膜を作成し、その上にフォトレジストを塗布して光線によって描画する。描画装置にはレーザーを用いるレーザー描画装置と電子線を用いる電子ビーム露光装置があり、これらは半導体製造装置の中でも最も高価な装置の1つである。一般に前者はスループットに優れ、後者は解像度で勝る。描画方法の違いでラスタ方式とベクタ方式、スタンプ方式がある。露光後に、現像、洗浄、乾燥、ポストベーク、ディスカムというパターン現像と呼ばれる一連の工程が行なわれる。この工程だけではパターンに応じたレジスト膜が付けられただけなので、続くパターンエッチング工程によって、不要な遮光膜が取り除かれる。エッチング後に洗浄と乾燥が行なわれ、パターン形成工程は完了する。 パターン形成工程後は検査がおこなわれる。寸法検査で発見されたサイズや位置の不良では修正が不可能であるが、欠陥検査によって発見された欠陥はかなりのものが欠陥修正装置で修正が可能になっている。欠陥修正装置で行なわれるパターン修正の内、余分な箇所は黒欠陥修正と呼ばれ通常はレーザーで除去され、欠けている箇所は白欠陥修正と呼ばれ通常はイオンビームで遮光性の高い材料を足されることになる。 フォトマスクやレチクルはステッパ等で扱われる間に埃などが表面に付くと不良の原因となるので、ペリクルと呼ばれる透明な膜がペリクルフレームに支持されて6.3mmの高さで表面上に張り渡される。この距離によって埃がペリクル上にあっても焦点からは遠く光線は結像に影響せずにすむ。これでフォトマスク、またはレチクルが完成する。 半導体製造工程ではステッパーによりウェハ上を移動しながら順次露光され、碁盤目状に多数の素子のパターンが転写される。ダイの大きさに応じて、2×2や3×3個分のパターンをマスク上に描画しておき、1回の露光で転写できる素子数を増やすことで生産性を向上させることも行なわれる。露光は1990年ごろまでは1:1サイズであったが、回路の微細化によって直線寸法で4-5倍の大きさで作られたフォトマスクで縮小露光されるものが現れた。先端の半導体製造現場ではこれらは特にレチクルと呼ばれ等倍のフォトマスクとは区別される。 単に露光光が透過の有無の2値のみのマスクをバイナリマスク、またはバイナリレチクルと呼ぶ。これに対して、不透過部にも若干(数%程度)の透過率を与え、透過部との干渉を利用して解像度を向上させようとしたものをハーフトーンマスク、またはハーフレチクルと呼ぶ。主に光の位相差を利用して解像度向上を図ることから、フェーズシフトマスク、またはフェーズシフトレチクルと呼ばれることもある。 光学的な解像度の限界を越えて求められる微細な半導体製造用の高精細なフォトマスクやレチクルでは、以下のような特別な工夫が行なわれている。 位相シフト 位相シフタによって位相の変わった光線と位相シフタを通過していない光線とを干渉させることで、通常では得られない光線波長以上の解像度を作り出す技術である。 OPC オプティカル・プロキシミティ・コレクション(Optical Proximity Correction)とは解像度の不足によって例えばパターンの鋭角部分が丸くなまるなどの変化をあらかじめ考慮して、角に突起を付加しておくなどの元画像に修正を加えておく技術である。
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