半導体製品と歩留まり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/07 15:57 UTC 版)
工業製品の歩留まりが低いものの代表格には半導体製品がある。かつてトランジスタがまだクリーンルームもなく手作業で製造されていた時代には、季節やその日の天候・湿度によっても歩留まりが大きく変化していた。これは空気中の埃などが半導体表面の膜生成に影響したためである(後述)。 半導体に関する物性が解明され、次第に不良になる原因が特定されて対策が講じられる様になり、クリーンルームで厳密な製造管理を行うようになると、歩留まりも次第に向上していくが、それでも製造時の各種パラメータのばらつきや、微細な塵芥の混入など、製品を製造するにあたっての障害を完全に排除する事はできず、歩留まりの問題では現在のCPUのような微細な回路を持つ集積回路のみならず常に製造技術的な改良が進められている。 CPUやハードディスクなどコンピュータ用の部品では、高い基準に合格したものをハイエンドモデルとして販売し、不合格となったものは基準を低くして(たとえば動作周波数を下げる、消費電力増を許容する、最大記録容量を減らすなど)、メインストリームモデルやエントリーモデルとして販売している。こうすることにより、単一の生産ラインからさまざまなグレードの製品を出荷でき、市場の需要を満たすことができる。歩留まりが向上すれば、さらに高い品質基準を設けることによって、新製品を開発せずとも“より高性能の新機種”を生み出すこともできる。最新CPUの動作周波数が一見向上していくように見えるのはそのためである。 この事実を逆に考えた場合、CPU・メモリ製品は額面より高い周波数で動作する可能性を秘めたまま出荷されていることになる。ここから、「ユーザー自身でCPU・メモリをオーバークロックして動かしてしまおう」という発想が生まれる。また、ベンダーからCPU・メモリの供給を受けたサードパーティーが、独自に選別を行ってオーバークロック仕様にした製品を出荷しているもの(ゲーマー向けグラフィックボードなど)もある。 詳細は「オーバークロック」を参照 また、半導体メモリやマルチコア化したCPUでは、あえて必要数より多くの回路を持たせて、そのうち一部に不良が出ても良品として出荷可能とすることで、チップとしての歩留まりを上げることも行われている。たとえば、Cell Broadband Engineにおいては、1チップ内にSynergistic Processor Element (SPE) というコアが8つ存在するが、動作するのは7つだけである。つまり、1つのSPEが動作しないチップでも良品となる。
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