医学・獣医学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 08:42 UTC 版)
抗痙攣薬としての性質が初めて指摘されたのは、1857年のロンドン王立医学・外科学会 (Royal Medical and Chirurgical Society of London) での会議におけるチャールズ・ロコック (Charles Locock) による発表である。これはてんかんに対して効果のある治療薬の最初の報告例とされる。当時てんかんは自慰が原因であると考えられており、ロコックは、臭化物塩は性的興奮を鎮めることによっててんかんの発作を抑えるとした。1912年にフェノバルビタールが登場するまで、てんかんに対して臭化カリウムより優れた薬剤は存在しなかった。 現在では、有効な抗てんかん薬のほとんどないドラベ症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん)において、クロバザム・スチリペントール(英語版)・トピラマート・バルプロン酸などを組み合わせて用いられている。また、イヌへの抗てんかん薬としても用いられている。フェノバルビタール単独で効果が思わしくない場合にしばしば補助薬として使用されるが、第一選択薬となる例も増加しつつある。過去にはネコのてんかんに対しても用いられていたが、呼吸器系の重篤な副作用を引き起こす危険性があるため、推奨されていない。 アメリカ食品医薬品局 (FDA) はヒトのてんかんに対する使用を認めていない。ドイツでは、全身性・強直間代性、あるいは小児期の大発作や筋クローヌス性のてんかんを伴うなど、子供や青年特に重篤な症状に対してである。少年期・青年期にこの薬剤に対して陽性反応を示した場合、さらに治療が続けられる場合もある。Dibro-Be mono の商品名で販売されている(処方のみ)。適切な症候に用いられれば、確実に効果をあらわすとされる。完全な生物学的利用能と、6週間という長い半減期を持つ。1錠あたり850 mgの臭化カリウムを含む。他の抗痙攣薬の吸収や排出を阻害するという報告はない。 副作用として、食欲の減退、吐き気・催嘔性、嗜眠、日中の眠気、抑うつ、集中力や記憶力の低下、せん妄、頭痛などを主訴とする、いわゆるブロム中毒(傾眠から昏睡に至る中枢反応、カヘキシー(悪液質)、エキシコーシス(exicosis、体液の欠乏)、反射の消失、間代性てんかん発作、ふるえ、運動失調(歩行障害)、神経感度の減少、運動麻痺、目における乳頭状浮腫、言語障害、脳浮腫、精神錯乱 (frank delirium)、攻撃性の増加、精神病)、そしてざ瘡型の肢端皮膚炎などの皮膚疾患、肺粘膜の分泌過多が挙げられる。気管支喘息や鼻炎にかかっている場合、悪化することがある。舌障害、アフテン (aphten)、口臭、オブスティペーション(obstipation、腸閉塞による重度の便秘)などもまれに見られる。
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