動物傅育
『英雄伝』(プルタルコス)「ロムルス」 巫女イリアが、軍神マルスとの間に双子のロムルスとレムスを産んだ。イリアの叔父アムリウス王は召使に命じ、双子を槽に入れて川に棄てさせた。槽は岸辺に着き、牝狼がやって来て双子に乳を飲ませた。1羽の啄木鳥がつきそい、双子を見守った〔*狼と啄木鳥は軍神マルスの使いと見なされている。ロムルスとレムスは成長後、軍勢を率いてアムリウスを攻め、捕らえて殺した〕。
『ギリシア奇談集』(アイリアノス)巻13-1 アタランテが生まれた時、父親は、男の子は欲しいが女の子はいらないと言って、山に捨てた。そこへ牝熊が来て、アタランテに乳を飲ませた。これを見た猟師たちが、牝熊からアタランテを引き離し、育てた。
『ギリシア神話』第3巻第12章 トロイアの王子パリス(=アレクサンドロス)は、国の破滅をもたらすというので、生まれてすぐ父王プリアモスの命令でイーデー山に捨てられ、5日間熊によって育てられた。
『今昔物語集』巻19-44 達智門に捨てられた赤ん坊のもとへ、夜な夜な大きな白犬がやって来て、乳を飲ませていた。
『三国史記』「高句麗本紀」第1始祖東明聖王前紀 柳花という娘が大卵を生んだ。卵を道に捨てると牛馬が避けて通り、野原に捨てると鳥がこの卵を覆い暖めた。この卵から生まれたのが朱蒙(東明聖王)である。
『史記』「周本紀」第4 周の后稷は、生まれると路地裏に捨てられたが、通り過ぎる牛馬が皆避けて踏まなかった。溝中の氷上に置くと、鳥が飛んで来て翼を氷上に敷いたり、上から覆ったりして暖めた。
『史記』「大宛列伝」第63 烏孫王昆莫は、生まれると野に捨てられた。すると、鳥が肉をくわえてその上を飛び、狼が来て乳を飲ませた。
『神道集』巻2-6「熊野権現の事」 五衰殿の女御は、鬼谷山で王子を産み落として斬首された。お産の血と斬首の血のにおいをかぎつけて、多くの野獣が集まって来る。12頭の虎が王子を食おうとやって来たが、母の乳房に取りつく王子(*→〔乳房〕7)を憐れみ、かえってこれを守護し、養育するようになった〔*類話の『熊野の御本地のさうし』(御伽草子)では、多くの虎狼が守護した、と記す〕。
『捜神記』巻14-3(通巻342話) 稾離(高麗)国王の側女が子を生む。王がその子を豚の檻に捨てると、豚が口をつけて息を吹きこみ、馬小屋に捨てると馬が息を吹きこむ。これは天の子ではないかと王は考え、東明と名づけて育てる。
『捜神記』巻14-5(通巻344話) 闘伯比がある人の娘と私通して生まれた子文は山に捨てられたが、虎が乳を飲ませ養った。子文は後に楚国の相となった。
『捜神記』巻14-6(通巻345話) 斉の恵公の妾が、野原で生み落とした子を放置したが、野猫が乳を飲ませ、はやぶさが羽でかばって育てた。この子は後に頃公となった。
『ダフニスとクロエー』(ロンゴス)巻1 山羊が男児に乳を飲ませ育てているのを、山羊飼いラモーンが見つける。彼は妻のもとに男児を連れ帰り、ダフニスと名づけて彼らの子とする。2年後、羊が女児に乳を飲ませ育てているのを、羊飼いドリュアースが見つける。彼は妻のもとに女児を連れ帰り、クロエーと名づけて彼らの子とする。成長したダフニスとクロエーは恋し合い、結婚する。
『ドイツ伝説集』(グリム)540「白鳥の騎士」 王妃ベアトリクスの生んだ7人の赤ん坊が捨てられ、老隠修士がこれを拾うが、彼にも赤ん坊をどう育てたらよいかわからない。すると、1頭の白い雌山羊が現れ、毎日赤ん坊たちに乳を与える。
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