前例検証と、階層化・兼用化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 08:29 UTC 版)
「危機管理」の記事における「前例検証と、階層化・兼用化」の解説
前例検証 「蓋然性の低い大災害にどこまで備えるか?」は難しい問題である。曰く、「天の崩落に備える必要があるか?(杞憂の語源)」「UFOの侵略に備える必要があるか?」「小惑星の衝突に備える必要はあるか?」「原発炉心溶融に備える必要はあるか?」「戦争に備える必要があるのか?」日本の国会でも類例の問答が行われたことがある。 「備える必要、の要不要判断」の「有力な目安」となるのは「過去の前例の検証」である 上記の例では、前例のない「天の崩落」「UFOの侵略」は「余程の科学的根拠がない限り」杞憂として扱われる 一方、前例のある「小惑星の衝突」「戦争」「原発炉心溶融」「大震災」などは前例があるので、皮膚感覚としては馬鹿げたことに思えても、「過去に起きている以上、想定するのが馬鹿げているように思える皮膚感覚は、動物としての人間の感覚錯覚である」と自覚して錯覚を補正して、「危険予知」「回避行動」「回避失敗時の防災準備」に着手せねばならない。大災害が起こってしまえば、前例がある以上、「想定外」という言い訳は通らないからである。 上記の感覚錯覚は、個人の日常感覚を、組織運営に持ち込むことによって起こる 階層化・兼用化 しかし、我々個人の日常では、そのような「蓋然性の低い大災害」に個人で備えることは、コスト上不適切である。 一般的に蓋然性が低いほど、低コストで危機管理することが求められるので、「上級広域組織」に危機管理を委任する。 たとえば蓋然性が低く、全地球的問題である小惑星の衝突は現在は西側諸国のリーダーの米国政府がNASAに命じて小惑星の捜索と軌道の確定を急がせている。15万個ほど発見されたものの、(衝突した場合、半径数百kmに大損害を与える直径1km級を含めて)数十万個が尚未発見なので、国家間共同での探索が求められている。また、戦争や原発炉心溶融に関しては国家レベルでの対応が必要である。 震災における津波対策の例を挙げれば、高いコストを投じてむやみに防潮堤を整備するよりも低コストかつ確実に人命を救う方策としては、平時において各個人に対して学校教育や公共放送を通じて、大きな揺れを感じたら、津波のおそれがあると考えて高台に退避するという「てんでんこ」の心がけを周知することが有効である。 火災においては、小規模なてんぷら油火災などに備える消火器は、可燃物を使用する企業が各店舗で備えるべきだが、消防車を各店舗で個別に買うのはコストがかかりすぎるので、自治体が消防車を準備する。民間が実施する備えは、せいぜい自衛防災組織や自衛消防組織までにとどまる。震災による原発事故では、震災による道路損傷・渋滞で電源車の到着が遅れたが、各自治体消防署で40億円もする大型輸送ヘリとガスタービン発電機を個別に買うのはコストがかかりすぎるので、上級広域組織である国が担当し、自衛隊の大型輸送ヘリと兼用化して、ガスタービン発電機空輸体制を整備したほうが低コストである。 このように、蓋然性の低い大災害の対応コスト問題については、「上級組織で広域対応する」「他の装備と兼用化する」という手段によって、低コストかつ良質の安全保障を提供するのが一般的な危機管理システムである。 「蓋然性が低いから備えなくていい」は誤り 上記のように、蓋然性の低い大災害については、「歴史を調べて前例を検証し」「前例があったなら、広域上級組織に上げて兼用化で、低コストで対処する」という対応が正しく、「組織問題の危機管理に個人感覚を持ち込んで、大災害想定は馬鹿げたことに思える生物的錯覚を信頼して、あるいは財源難を理由にして、碌に前例を調べずに、想定不適切事象=馬鹿げた杞憂に分類して、危機管理を怠る」という対処は、危機管理、危険予知の上で最も陥り易い誤りである。 このような危機管理の基礎は、本来学校教育で教育されるべきであるが、学校の教育カリキュラムにはないため、上級組織の担当者が上記のような錯誤を起こして、危機管理の対応が泥縄になる事態が頻発しているのが実情である。
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