分権経済
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 19:53 UTC 版)
分権経済は、プラウト政策全体に通じての考え方である。 中央集権経済の問題点に対して、経済の分権化を目指そうとするもので、サーカーは分権経済に次の5原則を挙げている。 「分権経済の原則は、第一に社会経済単位のすべての資産・資源がその地域の人々によって支配されるべきであること。第二に、生産は利益ではなく消費に基づいてなされるべきであること。第三に、生産と分配が協同組合を通じて組織されること。第四に、地域の人々が地域の経済的な経営体で雇用されなければならないこと。第五に、その地域外で生産された商品は地域市場から取り除くべきこと」。 ここでサーカーがいう、“社会経済単位”というのは、単純に一国として括る単位のことではなく、経済的な問題の共通性、地理的な特徴の共通性、民族・言語・慣習・文化などの共通性も考慮に入れた単位であることである。具体的には例えば、日本のようにこのような共通性が大きくまとまっていて、国の面積も小さい地域は一国単位で考え、面積の大きな国、インドなどはこのような共通性を考慮して分けられた国内の各地域(州単位に近い)にそれぞれ社会経済単位を確立するというような方向性である。 そして、サーカーは、この社会経済単位のためのブロックレベルの経済計画が必要であるとも述べている。これは、“市場経済の良い部分を取り入れた、ボトムアップ(下位上達、水平協働)型の経済計画”と言えるもので、いわゆる旧共産主義国(ソ連)型の市場経済を排除した国家独裁中央集権的計画経済とは違うものである。それは、商品価格の決定といったミクロ経済の処理はその社会経済単位の市場に委ね、マクロ経済の経済計画を中心に、この社会経済単位に一つかもしくは、社会経済単位の中のさらに下位の狭い地域のブロックを設けて、それを最小ブロックとして経済計画し、この社会経済単位を超えた範囲や観点の経済計画については、上位のブロックの経済計画(国単位や地域諸国連合単位など)で調整し、一番上位では世界(地球)連邦政府単位でも調整するということである。 また、科学的にも、サーカーのプラマー論から発する分権経済で提起される、ボトムアップ(下意上達、水平協働)というシステムは、地球の生態系や生物などの有機的なシステムをモデルとしたもので、それらを研究対象とする新しい複雑系の科学が、従来の機械論哲学から発したトップダウン(上意下達、中央集権)システムよりも、下部の意思の全体への反映や、情報処理の能力向上や、状況に適じて組織自身が柔軟に自己変成できるという意味で、優れているということを明らかにしてきている。このような新しいボトムアップシステムが社会の組織に応用されると、個人の意思(個性)が反映されることで、個人が組織の「歯車」として抑圧されるということがなくなり、個人の力によって状況に応じて社会組織自体も柔軟に自己変革するという社会にできる可能性がある。
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