分極率との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 23:10 UTC 版)
電気感受率は分極率とも呼ばれることがある。誘電率がマクロな量であるのに対し、分極率はミクロな量である。孤立した原子または分子の場合、分極率 α {\displaystyle \alpha } とは原子や分子の電気双極子モーメント p {\displaystyle {\boldsymbol {p}}} を誘起した局所電場 E l o c a l {\displaystyle {\boldsymbol {E}}_{\rm {local}}} と関連付けられた量であり、分子分極率ともいう。国際単位系では、分極率(C・m2・V-1)は電気双極子モーメント(C・m)と局所電場(N/C=V/m)を用いて p = α E l o c a l {\displaystyle {\boldsymbol {p}}=\alpha {\boldsymbol {E}}_{\rm {local}}} と関係づけられる。しかし、複数の原子や分子がある場合は、電気双極子モーメントが誘起する局所電場と周囲の電場との関係が複雑となる。 複数の原子または分子の電気双極子モーメントが全て一方向に整列しており、単位体積あたりの数がN(m-3)である場合、マクロな電気分極 P {\displaystyle {\boldsymbol {P}}} は分極率 α {\displaystyle \alpha } を用いて P = N p = N α E l o c a l {\displaystyle {\boldsymbol {P}}=N{\boldsymbol {p}}=N\alpha {\boldsymbol {E}}_{\rm {local}}} と関係づけられる。ここで、原子間または分子間の影響を無視できる程度に十分に孤立し、局所電場と原子や分子に加えられた周囲の電場が平行である場合は E l o c a l = E {\displaystyle {\boldsymbol {E}}_{\rm {local}}={\boldsymbol {E}}} であるため、マクロな電気分極は P = N α E {\displaystyle {\boldsymbol {P}}=N\alpha {\boldsymbol {E}}} となることから、電気感受率と分極率は χ = N α ε 0 {\displaystyle \chi ={\frac {N\alpha }{\varepsilon _{0}}}} の関係で表される。しかしながら、一般の場合は多数の電気双極子モーメント間の相互作用などにより局所電場は変化する。多数の電気双極子モーメントからなる系において、その内部の球形の中心では電気双極子モーメントの和が平均的に0となるという仮定から、局所電場は周囲の電場と電気分極との間で E l o c a l = E + P 3 ε 0 {\displaystyle E_{\rm {local}}=E+{\frac {P}{3\varepsilon _{0}}}} のように関係づけることができる(ローレンツの局所電場)。この局所電場を用いると、電気感受率は χ = N α / ε 0 1 − N α / ( 3 ε 0 ) {\displaystyle \chi ={\frac {N\alpha /\varepsilon _{0}}{1-N\alpha /(3\varepsilon _{0})}}} と表され、加成性で表される関係 χ = N α / ε 0 {\displaystyle \chi =N\alpha /\varepsilon _{0}} とは異なる。同じ分極率を有する元素から成る固体でも、電気双極子モーメントの配置の違いにより電気感受率の値は異なる。固体の場合、原子または分子の α {\displaystyle \alpha } を用いたこの関係式は不十分であることが多いが、局所電場を簡単に周囲の電場と関係づけられるため、実測の誘電率から分極率を評価するためによく使用される。 「クラウジウス・モソッティの関係」も参照 誘電体(絶縁体)の場合は、分極の起源が電子分極 α e l e c t o r n ( ω ) {\displaystyle \alpha _{\rm {electorn}}(\omega )} 、イオン分極(原子分極) α i o n ( ω ) {\displaystyle \alpha _{\rm {ion}}(\omega )} 、配向分極 α o r i e n t a t i o n ( ω ) {\displaystyle \alpha _{\rm {orientation}}(\omega )} に大別され、誘電体の分極率はその和で表される。 α ( ω ) = α e l e c t o r n ( ω ) + α i o n ( ω ) + α o r i e n t a t i o n ( ω ) {\displaystyle \alpha (\omega )=\alpha _{\rm {electorn}}(\omega )+\alpha _{\rm {ion}}(\omega )+\alpha _{\rm {orientation}}(\omega )} 分極率の周波数依存性は分極の起源と密接な関係があり、分極の運動が電場に追従できなくなる周波数領域では消失する。通常、有極性分子が向きを揃える配向分極は109Hz(マイクロ波領域)以下で発現し、原子位置の偏りから生じるイオン分極は1014Hz(赤外・遠赤外領域)以下で発現し、原子核に対する電子の偏りから生じる電子分極は1016〜17Hz(紫外域)以下で発現する。高分子では、高分子の分子構造に対応した原子分極の周波数が異なり、熱可塑性樹脂では低周波数側からα分散が主鎖構造レベルの分子振動、β分散が側鎖構造レベルの分子振動、γ分散が官能基レベルの分子振動というような関係がある。 「誘電分極」も参照 金属の場合は、物質中の電子があたかも自由電子のように運動できるため、自由電子の集団運動が電子分極の起源となる。誘電体における原子核に束縛された電子の偏りとは異なり、金属では物質全体に渡り電場と逆向きの電子の偏りが生じることが特徴である。金属における自由電子の集団運動はおおよそ1015Hz(可視光域)に特徴的な周波数(プラズマ周波数)がある。金属に特有な金属光沢は自由電子の集団運動と関係しており、金属では可視光域で χ {\displaystyle \chi } が-1よりも負に大きな値となる(誘電率が負となる)異常分散を示し、可視光を全反射する性質を有する。 詳細は「ドルーデモデル」および「プラズモン」を参照
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分極率との関係
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屈折率と分極率との関係は、ローレンツ・ローレンツの式で与えられる。
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