公立学校を巡る議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/16 10:20 UTC 版)
学力格差 公立学校は、私立学校に比べて、学力を十分に伸ばすことができず、公私で格差がある。2007年に行われた全国学力調査では 平均正答率(小学6年)を比べると、基礎力を試す算数Aは公立82.1%に対し、私立は10ポイント高い92.1%。応用力を試す算数Bは公立63.6%、私立77.1%で、差は13.5ポイントと大きく開いた。国語も同じ傾向。私立は上位校の多くが参加していない。より引用 と私立学校の生徒の方が正答率が高かったことへの指摘がある。私立学校がある都市部はともかく、そもそも私立学校を選択肢として考慮できない地方部もあるため、公立学校の教育能力の「立て直し」を求める意見もある。 一方で、教育学者の藤田英典はこうした意見に疑問を呈し、批判の為の批判を繰り返すマスコミの論調の影響を指摘した上で、日本の義務教育は「制度・機能・実践の全ての面で、国際的に見て非常に高い水準にある」としている。また藤田は、日本の公教育の水準の高さは諸外国にも認められており、日本の公教育に学ぶべき点は多いと考えられていると指摘している。なお藤田によると、特に日本の公教育において諸外国から高く評価されているのは授業研究による絶え間ない教育技術の自己研鑽、教師集団の協働性、公立学校のコミュニティ性とケア機能であるとされる。 また「陰山メソッド」で知られ、教育再生会議や中央教育審議会の委員を歴任した隂山英男は、平成17年の中教審義務教育特別部会において、教育で世界一と言われることもあるフィンランドが家庭での教育機会が多い一方で日本はそういった状況となるのは難しくその分を教師が補っていると述べている。そして財務省が「義務教育費国庫負担金が増えている」という意見に対し「私は、この財政審に、大丈夫です、給与に見合っただけの仕事を教職員はしているということを申し上げたい」と発言している。 生徒の学力向上は学習塾をあてにせざるを得ないという意見もあるが、リクルート出身の民間人校長藤原和博はこの問題について、生徒の学力を1から5までの五段階に分けると、1と5(最低と最高)の生徒を学校だけで教えることは無理があると指摘し、1の生徒は従来ならば地域社会が面倒を見て来たが、近年の社会情勢の変化によってそれが難しくなっている、また5の生徒は塾に行ってくれというのが教員の本音だろうと話している。また藤原は前出の陰山とともにフィンランドの教育事情を視察し、「フィンランドは教員の数が多い」「うち(和田中)でも教員があと7人、8人居れば(フィンランドのような教育は)出来る」とコメントしている。 カリキュラムについては、知識の応用や自分で考える力といった、ゆとり教育の目玉の一つでもあった総合的な学習の時間については、ゆとり教育の不安を煽っていた日能研などの学習塾が、「総合的な学習の時間」を学べるサービスの提供を始めているなど、状況は混沌としたものとなってきている。この背景には、私立学校などの入学試験が知識の応用等を求める内容になってきたという状況があるとも指摘されている。
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