休業補償給付・休業給付
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 10:21 UTC 版)
「労働者災害補償保険」の記事における「休業補償給付・休業給付」の解説
業務災害又は通勤災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき、休業の4日目から休業の続く間、支給される(第14条)。 給付は休業日が途中で断続していても、休業の続く限り支給される。日々雇入れられる者についても、補償請求権は労働関係の存在を権利の発生要件としているので、これに対する反対解釈の余地をなくするために労働基準法第83条(補償を受ける権利)に明記したものであって、当然補償費を支払うべきものである。従って労災保険法においても何等異なる取扱いをなすものではない(昭和23年8月9日基収2370号)。ただし、労働者が刑事施設、労役場、少年院その他これらに準ずる施設に拘禁・収容されている場合には支給されない(第14条の2)。また、傷病(補償)年金を受けることとなった場合は打ち切られる(傷病(補償)年金を受給後に障害の程度が該当しなくなった場合は、再度休業(補償)給付を請求する)。 支給要件として要求されるのは以下の通りである。 療養のためであること治癒後の処置により休業する場合には支給されない。例えば、業務上の負傷が治癒した後に義肢等装着のため整形外科診療所に入所しても、その入所期間中の休業に対しては休業補償給付は支給されない(昭和24年2月16日基収275号、昭和24年12月15日基収3535号)。なおこの場合は、社会復帰促進等事業の対象となる。 労働不能であること被災した事業場で、被災直前の作業に限らず、他の作業ができる場合には支給されない。 学生のアルバイト等で、労務不能でありながら登校受講する場合は、休業(補償)給付を支給すべきものとされる(昭和28年4月6日基収969号)。 特別加入者の場合、療養のため「業務遂行性が認められる範囲の業務または作業について」全部労働不能であれば、所得喪失の有無にかかわらずその支給事由となる。 賃金を受けない日であること賃金を全く受けない日はもちろん、平均賃金の60%未満の賃金しか受けられない日も含む。また懲戒処分等のため雇用契約上賃金請求権のない日も含む(浜松労基署長事件、最判昭和58年10月13日)。 特別加入者の場合は、基本的に賃金という概念はないので、「賃金を受けない日」という要件は不要である(平成11年2月18日基発77号)。 待期期間を満了していること休業の最初の3日間は待期期間となり、支給されない(業務災害の場合は労働基準法による休業補償(平均賃金の60%以上)を事業主が支払う義務を負う(昭和40年7月31日基発901号)。通勤災害の場合は、事業主に休業の最初の3日間の分の補償義務がないため、支給を受ける権利はない。そのため、休業1〜3日目に年次有給休暇を取得する場合がある)。この待期期間は継続していると断続しているとを問わない。したがって実際に休業した日の第4日目から支給される(昭和40年7月31日基発901号)。またその間金銭を受けていても成立する。 傷病が当日の所定労働時間内に発生し、所定労働時間の一部について労働することができない場合には、当日は「休業する日」に該当し、待期期間に算入される。いっぽう、所定労働時間終了後の残業中に傷病が発生した場合は、当日は休業日数に参入しない(昭和27年8月8日基収3208号)。 待期期間中に平均賃金の60%以上の金額が支払われた場合は、使用者が労働基準法上の休業補償を行ったものとして取り扱われる。傷病が当日の所定労働時間内に発生し、所定労働時間の一部について労働することができない場合に、平均賃金と実労働時間に対して支払われる賃金との差額について60%以上の金額が支払われている場合であっても、特別な事情がない限り、労働基準法上の休業補償が行われたものと取り扱い、その日を休業する日として待期期間に算入する(昭和40年9月15日基災発14号)。 支給額は、 所定労働時間の全部が労働不能の場合は、給付基礎日額の60%全部労働不能の場合、差額支給の問題は生じない。つまり、平均賃金の60%未満の賃金を支払った場合でも、給付は全額支給される。一方、60%以上の金額を支払った場合は使用者が労働基準法上の休業補償を行ったものとして取り扱われるため、給付は受けられない。 所定労働時間の一部について労働不能の場合は、給付基礎日額から当該労働に対して支払われる賃金の額を控除して得た額(労働不能部分に対応する給付基礎日額)の60%最高限度額が適用される場合、最高限度額の適用がないものとした給付基礎日額から、当該労働に対して支払われる賃金の額を控除して得た額(その額が最高限度額を超えるときは、当該最高限度額に相当する額)の60% 労働者が船員保険の被保険者である場合は、以下の金額が休業手当金として休業補償給付に上乗せされ、船員保険から支給される。休業の最初の3日間は、標準報酬日額の100% 休業4日目から4か月目までは、標準報酬日額の40%(休業補償給付の60%と併せると、実質上100%給付となる) 療養開始日から1年6か月を経過した日以後の期間で、休業補償給付の額が標準報酬日額の60%相当額より少ない場合、標準報酬日額から休業補償給付の額を控除した額の60%(限度額の適用により休業補償給付が標準報酬日額の60%を下回る場合、その差額が支給され60%相当額が保障される) 休業補償給付・休業給付は、労働不能の日ごとにその翌日から起算して2年の時効にかかる(第42条)。 なお、労災の休業補償給付・休業給付とは別枠で、社会復帰促進等事業の休業特別支給金(後述)を申請すれば、休業の4日目から給付基礎日額の20%が追加で支給される。休業特別支給金の申請は、原則として休業補償給付・休業給付の支給申請と同時にしなければならない(申請書も同一の用紙である)。
※この「休業補償給付・休業給付」の解説は、「労働者災害補償保険」の解説の一部です。
「休業補償給付・休業給付」を含む「労働者災害補償保険」の記事については、「労働者災害補償保険」の概要を参照ください。
- 休業補償給付休業給付のページへのリンク